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2 検察官による刑事処分決定に影響を及ぼす主要な因子 IV- 5表は,交通関係業過事件に関して,公判請求事件,略式命令請求事件及び起訴猶予事件のそれぞれについて,加害者の過失の内容,被害者の人数,被害者の過失の有無・程度,被害者の死傷の別及び傷害の治療期間,被害者の後遺症の有無・程度,加害者の運転車両の種類,事故の場所,物損事故の有無,事故時の被害者の行動並びに加害者の道交違反の有無・内容といった事故の内容に関する因子ごとに該当件数を示したものである。
IV-6表は,同様に,加害者の行政処分歴及び前科・前歴といった加害者の処分歴に関する因子ごとに該当件数を示したものである。 IV-7表は,同様に,被害者感情及び示談の状況といった事故後の状況に関する因子ごとに該当件数を示したものである。 IV-5表 検察官の処分別交通関係業過事件の因子(1) IV-6表 検察官の処分別交通関係業過事件の因子(2) IV-7表 検察官の処分別交通関係業過事件の因子(3) 公判請求事件,略式命令請求事件及び起訴猶予事件の三者間で,数値に比較的大きな違いが認められるのは,調査した因子のうち,[1]加害者の過失の内容,[2]被害者の過失の有無・程度,[3]被害者の死傷の別及び傷害の治療期間,[4]加害者の道交違反の有無・内容,[5]加害者の行政処分歴,[6]加害者の前科,[7]被害者感情である。これらの因子は,検察官による交通関係業過事件の刑事処分決定に影響を及ぼす主要な因子になっているものと考えられる。 以下,順次これらの各因子について見てみる。 (1) 加害者の過失の内容 (IV-21図参照) 運転開始・中止義務違反(酒酔い,酒気帯び,過労運転等のいずれかに該当するもの)は,8件あり,そのすべてが公判請求事件である。また,速度超過は,19件中17件が公判請求事件,2件が略式命令請求事件である。信号・標識無視等も,47件中26件が公判請求事件,10件が略式命令請求事件,11件が起訴猶予事件であって,公判請求される比率が高い。 これに対し,加害者の過失の内容で最も多い前後・左右安全不確認について見ると,公判請求事件でも63件に上るが,略式命令請求事件においては85件,起訴猶予事件においては81件となっており,公判請求される比率が低い。 IV-21図 加害者の過失の内容 (2) 被害者の過失の有無・程度(IV-22図参照) 被害者の過失の有無・程度(被害者が複数いる場合,そのうちいずれかに過失が認められれば,被害者の過失ありとした。)を検察官の処分の別によって見ると,公判請求事件の場合,被害者の過失なしが87件,過失軽微が10件,過失大が2件であるのに対し,略式命令請求事件では,過失なしが69件,過失軽微が29件,過失大が2件であり,起訴猶予事件では,過失なしが60件,過失軽微が23件,過失大が17件となっている。 これらの被害者の過失の内容は,いわゆる飛び出し,横断禁止場所の横断,一時停止標識無視,一方通行逆行,優先車両の通行妨害などである。 (3) 被害者の死傷の別及び傷害の治療期間 (IV-23図参照) 被害者の死傷の別及び傷害の治療期間について,検察官の各処分ごとに見ると,公判請求事件のうち31件は死亡事案,15件は全治又は加療(以下「全治」という。)6か月を超える(全治不詳を含む。)傷害事案である。これに対し,略式命令請求事件のうち41件は全治1か月以内(うち3件は全治2週間以内)の傷害事案で,全治6か月を超える傷害事案は3件,死亡事案は5件にすぎない。また,起訴猶予事件については,うち89件は全治1か月以内(うち54件は全治2週間以内)の傷害事案であり,死亡事案はない。 ところで,被害者の後遺症については,公判請求事件では,死亡及び後遺症の有無不明の事案を除いた53件中,後遺症ありか11件で,うち不治を含む重度の身体障害の後遺症ありか3件であるのに対して,略式命令請求事件では,死亡及び後遺症の有無不明の事案を除いた64件中,後遺症ありか6件で,うち不治を含む重度の身体障害の後遺症ありか2件である。また,起訴猶予事件では,死亡及び後遺症の有無不明の事案を除いた79件中,後遺症ありが1件で,その1件も軽度のものとなっている。 IV-22図 被害者の過失の有無・程度 IV-23図 被害の程度 (4) 加害者の道交違反の有無及び内容(IV-24図参照) 当該交通関係業過事件について,道交違反を伴って立件されているものは,公判請求事件では41件である。これに対し,略式命令請求事件では9件,起訴猶予事件では4件にすぎない。複数選択によるそれぞれの道交違反の内容を見たのが,IV-24図である。 IV-24図 道交違反の内容 (5) 加害者の行政処分歴(IV-25図参照) 事故当時加害者が運転免許に関する行政処分歴を有していたのは,公判請求事件では32件,略式命令請求事件では15件,起訴猶予事件では1件と,大きな差が見られる。また,加害者の行政処分歴の内容を見ると,特に,免許停止処分の有無について,公判請求事件,略式命令請求事件,起訴猶予事件の間では大きな差が見られる。 (6) 加害者の前科 (IV-26図参照) 加害者が前科を有していた件数については,公判請求事件では46件,略式命令請求事件では24件,起訴猶予事件では8件と,大きな差が見られる。そのうち,加害者が懲役又は禁錮刑の前科を有していた数は,公判請求事件で3件,略式命令請求事件で2件,起訴猶予事件で0件と,いずれもわずかであるが,加害者が有していた罰金刑の前科については,その回数別の数及びその合計数を比較すると,公判請求事件,略式命令請求事件,起訴猶予事件の間で,いずれも大きな差が見られる。 IV-25図 加害者の免許停止回数 IV-26図 加害者の前科(罰金回数) なお,事故当時加害者が前歴を有していた件数については,公判請求事件では18件,略式命令請求事件では14件,起訴猶予事件では11件であって,検察官の処分別にはそれほど大きな差は見られない。(7) 被害者感情 (IV-27図参照) 公判請求事件では,被害者が加害者の処罰を望んでいないものが64件,相応の処分を望んでいるものが21件,厳重処分を望んでいるものが12件であるのに対し,略式命令請求事件では,それぞれ69件,16件,9件,起訴猶予事件では,それぞれ87件,8件,1件である。 IV-27図 被害者感情 |