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2 データから見た交通犯罪の刑事処分 (1) 検察庁における交通犯罪の受理状況
全国の検察庁における昭和21年以降の交通関係業過,道交違反及び全事件の各新規受理人員の推移を見ると,IV-7図のとおりである(巻末資料IV-3表参照)。刑事統計年報及び検察統計年報においては,49年以前は交通関係業過の数値を独立には計上していないので,同年以前の検察庁関係の統計数値については,業過の数値によった(以下同じ。)。50年以降の検察統計年報によれば,業過の新規受理人員中に占める交通関係業過の同人員の比率は,毎年99%を超えている。 交通関係業過の新規受理人員は,昭和30年代から40年代前半にかけて激増し,45年にピークに達した後減少した。しかし,50年代半ばに再び増加に転じ,以後引き続き増加傾向にある。平成4年の業過の新規受理人員64万174人のうち,交通関係業過の新規受理人員は63万8,830人で,前年に比べて3万9,226人増加し,昭和40年代半ばのピーク時に迫る数値となった。 一方,道交違反(道路交通法施行以前については道路交通取締法違反等)については,昭和20年代後半から40年まで激増したが,43年7月からの交通反則通告制度の導入によって,受理人員が激減したところ,その後同制度の適用範囲の拡大等により新規受理人員が減少した。平成4年の新規受理人員は,前年に比べて1万8,366人増加して121万2,929人であり,うち,道路交通法違反の新規受理人員は114万4,668人となっている。 IV-7図 交通関係業過・道交違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和21年〜平成4年) IV-8図は,検察庁新規受理人員中に占める交通犯罪の割合を示したものである。交通関係業過が新規受理人員総数に占める比率は,昭和50年から60年までは,ほぼ14%ないし16%前後で推移していたが,以後毎年上昇し,平成4年には29.1%となっている。これに対し,道交違反が新規受理人員総数に占める比率は,交通関係業過のそれとは逆の動きを示しており,昭和50年代から61年にかけては,65%から72%の間を推移していたが,交通反則通告制度の適用範囲拡大を内容とする62年の改正道路交通法の施行後は50%台に下降し,平成4年は55.3%であった。この結果,交通関係業過と道交違反の合計受理人員が新規受理人員総数に占める比率は,昭和50年以降平成4年まで,80%ないし85%の間で推移している。IV-8図 交通関係業過・道交違反の検察庁新規受理人員構成比の推移(昭和40年〜平成4年) (2) 検察庁における交通犯罪の処理状況次に,交通犯罪の検察庁における処理状況を,交通関係業過,道交違反の別に見てみる(巻末資料IV-4表,同IV-5表参照)。 ア 交通関係業過 IV-9図は,交通関係業過につき,検察庁における処理状況を,公判請求,略式命令請求,起訴猶予の別に処理人員の推移を見たものである。 IV-9図 交通関係業過の検察庁終局処理人員の推移(昭和21年〜平成4年) IV-10図 交通関係業過の検察庁終局処理人員構成比の推移(昭和50年〜平成4年) IV-10図は,交通関係業過につき,公判請求,略式命令請求,起訴猶予,その他の処分のそれぞれが,処理人員全体に占める割合の推移を見たものである。注目すべきは,昭和62年以降,交通関係業過の新規受理人員にはさほど大きな変動がないのに,起訴人員は,公判請求人員,略式命令請求人員共に,年を追うごとに大きく減少し,逆に,起訴猶予人員が大きく増加していることである。すなわち,交通関係業過の起訴率は,50年代から60年代初めにかけては年を追うごとに上昇し,50年に66.7%であったものが60年には73.0%に達し,61年も72.8%の高率であった。ところが,62年には54.1%,63年には44.6%,平成元年には39.8%,2年には31.1%,3年には21.4%,4年には18.7%と急激に低下した。 イ 道交違反 IV-11図は,道交違反につき,検察庁における処理状況を,公判請求,略式命令請求,起訴猶予等の別に処理人員の推移を見たものである。道交違反の起訴率は,昭和40年代前半においては93%程度であったが,40年代後半から上昇して50年代は97%前後で推移した。62年以降は起訴率が低下し,94%ないし95%前後となっており,平成4年は95,5%であった。ここでは,交通関係業過に見られたような起訴率の大きな変動は見られず,起訴人員,中でも略式命令請求人員の変動は,主として新規受理人員の変動によるものである。 IV-11図 道交違反の検察庁終局処理人員の推移(昭和21年〜平成4年) (3) 裁判所における交通犯罪の処理状況ア 業 過 業過について,刑法211条に選択刑として懲役刑が加えられた昭和43年以降における,第一審裁判所で懲役刑,禁錮刑又は罰金刑の言渡しを受けた人員の推移を見たのがIV-12図である(巻末資料IV-6表参照)。司法統計年報においては,交通関係業過の数値が計上されていないので,業過の数値によった(以下同じ。)。 IV-12図 第一審裁判所における業過の刑名別有罪人員の推移(昭和43年〜平成3年) 業過で懲役刑又は禁錮刑を言い渡された人員は,合計で,昭和40年代は毎年おおむね1万人前後ないしはそれ以上であったが,50年代から62年にかけては毎年おおむね9,000人台で推移し,63年に8,000人台となって以降毎年減少しており,平成3年は合計6,374人にまで減少した。また,業過て罰金刑を言い渡された人員は,昭和45年をピークとして以後50年代初めにかけて減少したが,その後増加し,61年には36万人台に達した。しかし,62年以降毎年大きく減少しており,平成3年は11万904人であった。IV-13図 第一審裁判所における業過についての懲役刑選択率及び実刑率の推移(昭和43年〜平成3年) 業過における自由刑の言渡しにおいて,懲役刑が選択された比率(以下「懲役刑選択率」という。),懲役刑,禁錮刑のそれぞれにおける実刑を言い渡された者の比率(以下「実刑率」という。)の推移を見たのがIV-13図である。業過における懲役刑選択率は,懲役刑が刑法211条に選択刑として付加された昭和43年以降,ほぼ一貫して上昇し,60年には48.3%に達した。しかし,61年以降は,少しずつ低下しており,平成3年は43.0%であった。また,業過における懲役刑及び禁錮刑の各実刑率は,いずれも,昭和40年代に比べ低下している。懲役刑の実刑率を見ると,43年に57.1%であったものが61年には23.6%にまで落ち込んでいる。もっとも,62年以降はほぼ横ばい,ないしはわずかながら上昇傾向が認められ,平成3年は25.5%であった。禁錮刑の実刑率を見ると,昭和43年には30.3%であったが,47年以降急激に低下し,60年以降は7%台で,わずかずつ低下する傾向にあり,平成3年は7.1%であった。 次に,第一審裁判所による,業過に対する刑期及び罰金額の推移について見てみる。 IV-14図及びIV-15図は,昭和50年以降の,業過により懲役刑又は禁錮刑を言い渡された者について,それぞれ,刑期別に比率を見たものである(巻末資料IV-7表参照)。 実刑と執行猶予付きの合計で見た場合,懲役,禁錮のいずれについても,6月未満の刑期,6月以上1年未満の刑期の比率が共にほぼ一貫して減少しており,代わりに,1年以上2年未満の刑期,2年以上の刑期の比率が共にほぼ一貫して増加している。このことから,刑期そのものは,次第に長期のものが言い渡されるようになってきているといえよう。もっとも,3年以上の刑期を言い渡された者の数は,平成元年が懲役6人,禁錮1人,2年が懲役4人,禁錮1人,3年が懲役4人,禁錮2人となっており,非常にわずかである。昭和62年以降,懲役刑においても禁錮刑においても,6月未満の刑期及び6月以上1年未満の刑期の言渡しが特に減少している。中でも執行猶予付きの判決にその傾向が著しく表れている。 IV-14図 業過について第一審裁判所において言い渡された懲役刑の刑期別構成比の推移(昭和50年〜平成3年) IV-15図 業過について第一審裁判所において言い渡された禁錮刑の刑期別構成比の推移(昭和50年〜平成3年) IV-16図 業過について第一審裁判所において言い渡された罰金刑の罰金額別構成比の推移(昭和48年〜平成3年) IV-16図は,昭和48年以降の,業過により罰金刑を言い渡された者について,罰金額別に比率を見たものである。罰金額の法定刑の上限が平成3年に引き上げられたことと連動して,言い渡された罰金額も上昇していることがうかがわれるが,法定刑の引上げを別としても,年を追うごとに次第に高額の言渡しの割合が増加していることが分かる。また,昭和62年以降,罰金刑の言渡し額別の比率が大きく変動している。 イ 道交違反 IV-17図は,道交違反により,第一審裁判所で懲役刑又は罰金刑の言渡しを受けた人員の昭和36年以降における推移を見たものである(巻末資料IV-8表参照)。 IV-17図 第一審裁判所における道交違反の刑名別有罪人員の推移(昭和36年〜平成3年) 道交違反で懲役刑を言い渡された人員は,昭和40年代後半から50年代前半にかけて激増し,ピークの55年には8,955人に達したが,その後はおおむね減少する傾向にあり,平成3年における人員は6,329人であった。禁錮刑を言い渡された人員は,極めて少数であり,各年とも20人に達していない。罰金刑を言い渡された人員は,昭和40年の417万1,147人がピークで,交通反則通告制度の導入により,44年には100万2,659人にまで減少したが,その後,52年及び60年を第2,第3のピークとして増減を繰り返した。平成3年は99万3,967人であった。IV-18図は,昭和48年以降の,道交違反により罰金刑を言い渡された者について,罰金額別に比率を見たものである。 昭和61年までは,罰金刑の罰金額別構成比には大きな変化が見られない。ところが,62年4月に施行された改正道路交通法により,罰則の罰金額の上限が引き上げられたことに伴い,同年において3万円未満の罰金刑の言渡しが激減し,3万円以上5万円未満,5万円以上10万円未満の言渡しがそれぞれ激増し,その傾向は63年以降も続いている。62年以降,10万円以上の言渡しも増加しており,道交違反の罰金刑については,罰金額が急速に高くなっているといえよう。 IV-18図 道交違反について第一審裁判所において言い渡された罰金刑の罰金額別構成比の推移(昭和48年〜平成3年) |