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 平成 5年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/1 

第3節 外国人の日本における犯罪

1 概  況

 昭和50年代後半ころから顕著となった来日外国人の増加傾向は,その後も衰えず,平成4年も,増加率は低下したものの,引き続き増加している。その状況を,最近の5年間について,新規入国者数と出国者数とを対比して示したものがI-31図であり,国籍別に見ると,特にアジア諸国からの入国者数が急増しており,しかも,それに対応する出国者数が各年次とも入国者数をかなり下回っていることが分かる。
 これらの来日外国人の大多数は,観光・商用等の短期滞在,興行,研修等,入管法が認めている各種の活動を目的として適法に入国し出国しているが,他方,不法に就労することを目的とし,観光客等を装って入国する者も急増している。また,不法に就労することを目的として来日しようとする外国人が,在外公館の領事官や法務省の入国審査官から,不正に査証あるいは上陸許可を得ようとする手段・方法も,偽造・変造旅券又は他人名義の旅券を使用するなど悪質化している。

I-31図 外国人新規入国者数及び出国者数の推移

I-32図 不法残留者数(推計値)の推移

 法務省入国管理局の推計によれば,不法残留(許可された在留期間を経過しても出国せず,本邦に残留すること。)している者の数は,I-32図のとおり,平成2年7月1日現在の約10万6,000人から4年11月1日現在の約29万3,000人へと増加している。これを国籍別に見ると,最も多いのがタイで約5万3,000人となっており,次いで韓国約3万7,000人,マレイシア約3万5,000人,フィリピン約3万4,000人,イラン・イスラム共和国約3万3,000人,中国約2万9,000人などとなっている。また,これを男女別に見ると,男子約19万3,000人,女子約10万人となっている。
 外国人の出入国及び在留を管理する業務は,法務省入国管理局が所管しており,全国で2か所の入国者収容所,8か所の地方入国管理局,4か所の支局及び98か所の出張所において,合計約1,900人の入国審査官,入国警備官等が,不法に就労しようとする外国人等,上陸条件に適合しない者の上陸防止及び不法に就労した外国人等,退去強制事由に該当する者の退去強制に努力を傾注している。
 出入国管理行政事務に携わる職員の定員の推移は,I-33図のとおりである。

I-33図 出入国管理行政に携わる職員定員の推移 (昭和60年〜平成4年)

 最近の8年間に入国審査官が出入国港において上陸を拒否した外国人の数の推移は,I-34図のとおりであり,また,最近の8年間に入管法違反により退去強制の手続を執った外国人の数及びその中に占める不法就労者数の推移は,I-35図のとおりである。法務省入国管理局の資料によれば,不法に就労していた者のほとんどは,アジア諸国から来日した者であり,我が国での就労職種別に見ると,最近,男子では,建設作業員又は工員をしていた者が,女子では,ホステス又は工員をしていた者が多い。

I-34図 上陸拒否者数の推移(昭和60年〜平成4年)

I-35図 退去強制の手続を執った外国人の数及び不法就労者数の推移(昭和60年〜平成4年)