犯罪の捜査共助は,外国から要請がなされた場合に,国際捜査共助法(昭和55年法律69号)に基づいて行われている。
同法では,外国から刑事事件の捜査に関して共助の要請があった場合に,
[1] 原則として外交機関を通じて要請されたものであること
[2] 政治犯罪でないこと
[3] 捜査の対象となっていろ行為が日本国内で行われた場合,我が国の法令上罪に当たること
[4] 相互主義の保証の下で要請されたものであること
などを要件に,当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠を提供することとされている。
法務省刑事局の資料によれば,平成4年中に,フランス,アメリカ,イギリス,オーストラリア,オランダ王国,大韓民国(以下「韓国」という。)及び中華人民共和国(以下「中国」という。)から,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計18件の捜査共助の要請を受けており,このうち16件については,同法に基づいて処理されている。また,同年中に,我が国からは,イギリス,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。),スイス連邦,アメリカ,韓国及びタイ王国(以下「タイ」という。)に対して,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計9件の捜査共助の要請をし,このうち6件については,回答を受けている。
外国の裁判所から我が国の裁判所に対し,外交機関を経由するなど一定の条件を具備した嘱託がなされたときは,我が国の裁判所は,外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法(明治38年法律63号)に基づき,民事及び刑事の訴訟事件に関する書類の送達及び証拠調べにつき,国内法に従って法律上の「輔助」を行うこととされている。
最高裁判所刑事局の資料によれば,平成4年においては,刑事の訴訟事件に関し,ドイツの裁判所から証拠調べ等の嘱託を受けたものが2件あり,そのうち1件が,同年中に同法に基づいて処理されている。
他方,同年中に,刑事の訴訟事件に関し,我が国の裁判所から,中国の裁判所に対して書類の送達を嘱託したものが1件ある。