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 平成 3年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/1 

第2節 裁  判

1 概  説

 刑事事件の第一審は,原則として,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所で行われ,その第一審判決に対する控訴は高等裁判所で,その控訴審の判決に対する上告は最高裁判所で行われる。
 地方裁判所は,罰金以下の刑に当たる罪,家庭裁判所の専属管轄に係る罪及び高等裁判所が第一審の裁判権を有する罪については裁判権を有しないが,それ以外の罪に係る訴訟について第一審の裁判権を有する。家庭裁判所は,少年法で定める少年の審判を行うほか,成人の刑事事件で少年の福祉を害する事件に係る訴訟について第一審の裁判権を有する。簡易裁判所は,家庭裁判所の専属管轄に係る罪を除いて,罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪,常習賭博罪,賭博開帳罪,窃盗罪,窃盗未遂罪,横領罪及び賍物罪に係る訴訟について第一審の裁判権を有する。
 高等裁判所は,地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の判決に対する控訴,地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の決定並びに命令に対する抗告(最高裁判所の権限に属する抗告を除く。)及び内乱罪など高等裁判所が第一審の裁判権を有する罪に係る訴訟の第一審について裁判権を有する。
 最高裁判所は,上告及び法律で特に定められている抗告について裁判権を有する。
 地方裁判所及び家庭裁判所における第一番の裁判は,通常の公判手続によって行われ,簡易裁判所における第一審の裁判は,通常の公判手続又は略式手続によって行われる(なお,第一審の裁判所で通常の公判手続によって行われた事件を「通常第一審」という。第4編第3章参照)。
 裁判は,第一審の裁判の後,上訴がなされずにその裁判で確定するものと,第一審の裁判に対して上訴がなされ,その後に確定するものとがある。II-8表は,最近5年間に裁判が確定した者の裁判結果を見たものである。
 平成2年に裁判が確定した者のうち,有期懲役に執行猶予が付された者は3万744人で,その執行猶予率は56.8%(前年は55.7%)であり,有期禁錮に執行猶予が付された者は4,122人で,その執行猶予率は94.0%(同93.8%)であって,この両者を合わせた執行猶予率は59.6%(同58.4%)となっている。
 罰金で執行猶予となった者は9人にすぎない。また,裁判が確定した者総数に占める罰金に処せられた者の比率は94.9%,科料に処せられた者の比率は0.5%であり,無罪となった者の比率は0.01%である。

II-8表 全事件裁判確定人員(昭和61年〜平成2年)