(1) 第一審
平成元年中の地方裁判所及び家庭裁判所による第一審裁判所としての終局裁判の結果を見たものがII-9表である。罪名別に見ると,覚せい剤取締法違反(総数の22.2%)が最も多く,以下,業過(同15.4%),道交違反(同12.7%),窃盗(同8.6%),傷害(同7.4%),詐欺(同6.5%)の順となっている。総数に占める無罪の比率は0.2%である。なお,家庭裁判所の処理に係る少年に対する成人の刑事事件については,懲役・禁錮言渡し人員142人中の135人(95.1%)は児童福祉法違反によるもの,罰金・科料言渡し人員121人中の69人(57.0%)は労働基準法違反によるものである。
平成元年中の簡易裁判所による第一審裁判所としての終局裁判の結果を見たものがII-10表である。
略式手続による事件を罪名別にみると,道交違反(総数の78.3%)が最も多く,以下,業過(同17.7%),傷害(同0.8%)の順となっている(司法統計年報による。)。
(2) 上訴審
平成元年に言い渡された第一審判決に対する上訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては9.7%,簡易裁判所の判決に対しては5.1%となっている。
元年の高等裁判所の控訴受理人員は5,178人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは98.1%,検察官のみの申立てによるものは1.6%,双方からの申立てによるものは0.3%である(司法統計年報による。)。
II-11表は,平成元年中に高等裁判所が控訴審として処理した結果を,罪名別に見たものである。終局処理人員総数の18.4%は控訴が取り下げられ,64.7%は控訴が棄却され,16.6%は原判決が破棄された上改めて判決が言い渡され(破棄自判),0.2%は原判決が破棄されて更に審理を尽くすべく第一審に差戻し又は移送されている。罪名別の取下率は,覚せい剤取締法違反が28.9%,窃盗が28.8%と高く,破棄自判の率は,業過が32.5%,詐欺が26.9%と高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数865人中28.6%の247人は量刑不当によるものである。なお,検察統計年報によれば,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,元年中に8人の被告人に対し控訴審の裁判が行われているが,そのうち4人(50.0%)については,第一審判決が覆されて有罪となっている。
II-9表 罪名別地方・家庭裁判所終局処理人員(平成元年)
II-10表 罪名別簡易裁判所終局処理人員(平成元年)
II-11表 罪名別控訴審終局処理人員(平成元年)
II-12表 罪名別死刑・懲役・禁錮の第一審科刑状況(平成元年)
平成元年中に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では38.4%で,第一審判決に対する上訴率に比べると高くなっている。元年の最高裁判所の上告受理人員は1,507人であるが,そのうち検察官の申立てに係る者は6人である。元年中に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は,前年より76人減の1,547人で,その内訳は,上告取下げ255人(16.5%),上告棄却1,259人(81.4%),原判決破棄28人(1.8%)などとなっている(司法統計年報による。)。