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 平成 元年版 犯罪白書 第4編/第5章/第4節/1 

第4節 少年非行の動向及び処遇

1 少年非行の動向

 昭和の少年非行について,交通関係業過を除く少年刑法犯によって見ると,少年非行は,戦前には比較的少なく,検挙人員中に占める少年の比率も,昭和16年で約16%,19年で約24%にすぎなかったが,戦後は急激に増加し,58年のピークを過ぎたものの多数発生しており,少年の上記比率も56年以降おおむね50%を超えている。このように,少年非行は,戦前は比較的少なく,戦後はその増加が著しいといえる。
 罪名別の推移を見ると,昭和10年代の経済的困窮を背景とする窃盗の増加,20年代前半の戦後の社会的混乱と経済的困窮に起因する窃盗,強盗の激増,30年代から40年代後半にかけての自動車交通の発達,工業化・都市化に伴う各種葛藤の増大,性風俗の解放等を背景とする交通関係業過,粗暴犯及び性犯罪の増加,50年代から現在までの豊かな社会での犯罪の機会の増大に伴う万引きや自転車盗などの窃盗及び放置自転車の占有離脱物横領等の増加がある。また,特別法犯では,近年におけるシンナー等有機溶剤や覚せい剤の濫用による薬物関係犯罪の増加などが特徴的である。年齢的に見ると,戦後は,年少少年の著しい増加傾向と年長少年の横ばいないし減少傾向が見られる。さらに,40年代後半から,女子少年の非行の増勢,特に,薬物関係の犯罪の増加が注目される。
 また,少年の教育,家庭環境については,戦前の状況は明らかでないが,戦後の混乱期には,実父母のいない経済的にも貧困な家庭の非行少年が多かったが,昭和40年代以降は,両親のそろった,生活にも困窮していない家庭,いわば普通一般の家庭の少年の非行が増加している。また,有職者や無職の少年の比率が減少して,学生・生徒の比率の増加が大きな特徴となっている。ただ,非行程度の進んでいる少年院収容者では,保護者が実父母でない者が最近では5割に達しており,保護関係の悪いものが増えているのが対照的である(第4章第1節参照)。