前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和37年版 犯罪白書 第三編/第三章/二/1 

1 教科教育・通信教育

 少年刑務所の収容者のうちにも義務教育未修了者の数はかなり多い。法務省矯正局の調査によれば,川越・松本・奈良・岩国および佐賀の各少年刑務所の昭和三六年末収容人員(準少年および青年受刑者若干を含む)の計二,八〇七人のうち,その約一九・六%にあたる五五〇人が義務教育未修了者で,不就学のもの一五人,小学校未修了のもの一四〇人および中学校未修了のもの三九五人となっている。なお,このほかに高等学校中退者三一七人と大学中退者三人がある。
 少年刑務所では,これらの義務教育未修了者のほか,修了者のなかでも学力の低いものに対して教科教育を施して,社会復帰後の更生に役立てようとしている。前記五施設における昭和三六年末現在の教科教育実施人員は,小学校課程二一二人,中学校課程八九〇人で,このほか高校中退者で学力補習を希望するものや職業訓練生を対象として,高等学校課程の教科教育を八二人に対して施している。なお小学校および中学校課程の教科指導においては,教科書中心の教授方法によらず,日常生活に即した生活中心のカリキュラムに重点をおいている点に特色がある。
 少年院においては,義務教育を修了させた者に対して少年院長が修了証書を交付できる制度が認められているが,従来少年刑務所にはかかる制度がなく,出所後の更生復帰の一つのさまたげとなっていたが,昭和三〇年四月から松本少年刑務所では,所内に松本市立旭町中学校の分校が設立されたのでこの問題を解決することができた(昭和三五年度版犯罪白書三六九頁参照)。昭和三六年三月までの同分校卒業生は,一三三人に達し,現在第八期生が就学中である。
 以上の教科教育は,施設の教官等によって学習指導がなされているが,特殊課目の受講を希望する者に対しては,その能力,資格などを選考の上,一般社会の通信教育を受講させている。通信教育受講者の大部分は,その費用を公費によってまかなわれるが,余裕のある一部の者は,私費によっても受講することが許されている。法務省矯正局の調査によれば,前記五施設の昭和三六年末現在,通信教育受講者数は,簿記四五人,自動車技術二八人,ラジオ・テレビ・電気工学等二八人,孔版九人,洋裁その他一一人,上級英語九人および大学・高校三五人の計一六五人である。