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 昭和37年版 犯罪白書 第三編/第二章/二/2 

2 職業補導

 現在少年院で実施している職業補導は,「少年院職業補導基準」,「少年院職業補導技能標準」および「少年院職業補導設備基準」により,付与すべき知識,技能の内容,教科課程の編成,必要な機械器具等について基準が示されている。昭和三五年および昭和三六年の種目別の実施施設数と補導人員をみると,III-17表のとおりである。しかし,職業補導の整備にはきわめて多額な経費を要し,また,収容少年のなかには職業適性に乏しい者が相当あるので,一律な職業補導を行なうことは困難な実情にある。

III-17表 少年院職業補導種目と補導人員等(昭和35,36年)

 そこで,各施設ともその実情に応じて一ないし数種の種目を選んで訓練課程として重点的に整備し,熟練技能的な職業補導を行ない,その他若干の種目を指導課程として一般的な職業適応力の増大をはかるよう職業補導を行なうこととしている。
 次に,収容少年が在院中に,なんらかの職業に関する資格や免許を取得することは,出院後の就職を容易にし,また,少年が自己の知識,技能に自信をもつようなことが,その更生上きわめて有利なので,少年院の処遇としてとくに重点が置かれなければならないところである。III-18表は,昭和三四,三五年における資格または免許の取得者の人員であるが,これによると,受験者の合格率は,増加の傾向を示している。しかし,その大半が珠算であって,一般に技術を要する種目の合格者はまだその数が少なく,まだ満足な状態にあるとはいえない。

III-18表 資格・免許取得の人員等(昭和34,35年)

 在院中に修得した職業補導の種目と出院後の職種との関連については,III-19表のとおり,自動車,サービス,木工,金工等の専門的な知識,技能を修得したものは,出院後も関連した職種に就き易いようである。

III-19表 在院中の職業補導種目と出院後の職種との関連状況(昭和35年)

 この表で注目されるのは,出院者の約五五%に及ぶものが出院時に就職が決定されていないことである。もちろん出院後に適当な就職先を求め得た場合も少なくないとおもわれるが,少年を更生せしめ,再び非行に陥らせないためには,出院時に適当な就職先が決定されていることが必要である。この意味から,少年院出院者に対する就職の斡旋がさらに積極的に行なわれるような施策が望まれる。
 教科教育および職業補導に関連して,公費による通信教育制度がある。昭和三五年度におけるその実施状況は,III-20表のとおりで,年度内の受講者の数は,一,五五九人,年度内に修了したもの九〇一人,このうち退院・仮退院により中止したものが三二五人であるから,五七六人が通信教育の課程を修了したことになる。受講者は成績等により選考されているので,この数は必ずしも多いとはいえないが,活発にこの制度を利用する努力がなされていることがわかる。

III-20表 公費通信教育実施人員等(昭和35年4月1日〜36年3月31日)