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 昭和37年版 犯罪白書 第二編/第四章/三/1 

1 保護観察所への出頭状況

 保護観察開始時における対象者の保護観察所への出頭は,対象者に保護観察の意味と立てまえをのみこませ,保護観察中の守るべき遵守事項を理解させ,また,保護観察中における保護観察官または保護司と対象者との結びつきをつくるために,きわめて重要な役目を果たすものである。
 対象者の種別ごとにその出頭状況をみると,II-34表に示すように,仮出獄者(出頭率九四・九%,以下同じ),少年院仮退院者(九七・一%),婦人補導院仮退院者(九二・八%),保護観察処分の少年(九二・七%)は,比較的出頭率がよいが,保護観察付執行猶予者は八四・二%で必ずしも好成績とはいえない。仮出獄者の不出頭率は,II-35表にみるように,昭和三一年以降漸減の傾向にあり,昭和三五年には五・一%となっているのである。これに反して,保護観察付執行猶予者の不出頭率は,昭和三一年より漸増の煩向にあり,昭和三四年には二一・七%まで上昇したが,昭和三五年には減少を示して一五・八%となっている。

II-34表 保護観察種類別新受人員の出頭状況別人員と出頭率(昭和35年)

II-35表 保護観察開始時の出頭者・不出頭者数と率(昭和31〜35年)

 このように,保護観察付執行猶予者の不出頭率が高いのは,どのような理由によるものであろうか。その理由の一つは,保護観察付執行猶予者の保護観察は,これを言い渡した裁判所またはその対応の検察庁から通知を受けない限り,本人からの届出がないと,保護観察所は,対象者の住居地はもちろん,その氏名さえも知ることができず,したがって,積極的に本人またはその家族への連絡や呼出等出頭を促す措置をとることができないことである。そこで,裁判所と保護観察所とのバトン・タッチを円滑にすることがこの隘路を解決する唯一の途とおもわれる。多くの場合裁判所では判決宣告の際すみやかに保護観察所に出頭すベき旨の説示がなされ,または本人に交付される心得書によってその旨が伝えられることになっているが,しかし,右の不出頭率からみると,これだけでは足りず,進んで保護観察所にすみやかに連絡する等適宜な措置をとり,出頭確保をはかるとともに,保護観察所も裁判所に常駐保護観察官を配する等の措置を講ずる必要があろう。
 保護観察所に出頭しない者の多くは,出頭しないまま所在をくらまし,なかには再犯を重ねる者も少なくない。この種の者は,保護観察じたいになじみ難い対象者といえるであろう。