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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第七章/五 

五 罰金と科料

 罰金と科料は,ともに財産的利益を奪うことを内容とする刑罰である。両者の区別は,本来それぞれに対応する犯罪の性質を異にするという点にあったが,現在ではその点が必ずしも明瞭でなく,単に金額の範囲だけの相違となっている。
 第一審で罰金,科料を言い渡される人員はI-158表のとおり,全有罪言渡人員の九五・九%(昭和三五年)を占め,このうち罰金は,全有罪言渡人員の六七・九%,科科は二八・〇%である。このように,罰金と科料の占める比率が高いのは,その有罪言渡人員の大部分が道交違反者だからである。昭和三五年に罰金または科料を言い渡された者は,約二〇九万余人であるが,このうち道交違反が約一八五万人であるから,その比率は約八五%にのぼっている。なお,昭和三一年以降の推移をみると,罰金の率は上昇しているのに対して,科料は減少傾向をみせている。これは,道交違反に対して罰金が科せられる場合が次第にふえてきたためである。

I-158表 第一審有罪被告人中の罰金・科料の人員と率(昭和31〜35年)

 罰金と科料は,通常裁判手続(公判請求により開始されるもの),略式命令手続または即決裁判手続のいずれかによって科せられるが,通常裁判手続によるものは,全有罪人員の〇・五%にすぎず,主として略式命令手続と即決裁判手続によって科せられている。昭和三五年に第一審の通常裁判手続で罰金または科料の言渡を受けた者を刑法犯と特別法犯とに分け,それぞれの有罪言渡人員に対する比率をみると,I-159表のとおり,刑法犯では,罰金が四・三%,科料がわずか一四人,特別法犯では,罰金が四二・九%,科料が一・七%である。なお,略式命令手続では,罰金が六九・三%を占め,科料は三〇・七%にすぎない。

I-159表 裁判手続別罰金・科料の人員と率(昭和35年)

 次に,罰金の科刑の分布状況をみると,I-160表のとおりである。司法統計年報では通常裁判手続と略式手続とで罰金額の基準を異にして統計がつくられているので,両者を分けて罰金額をみると,通常裁判手続では,一万円以上五万円以下が三五・〇%で最も多く,これに次ぐのが五千円以上一万円未満の二三・二%である。これに反して,略式命令手続によるものは,千円以上二千円未満が四六・九%で最も多く,これに,二千円以上三千円未満の二五・六%,三千円以上五千円未満の一五・五%がつづいている。したがって,これらを合計すると,略式命令手続による罰金事件の八八%までが五千円未満の罰金が科せられている。これは道交違反による小額な罰金が多いためである。なお,通常裁判手続による罰金のなかには,一〇〇万円以上のものが四二人あるが,これは主として税法違反により高額の罰金を科せられたものである。

I-160表 通常・略式別罰金の金額別人員と率(昭和35年)

 五万円以下の罰金を言い渡す場合には,情状により刑の執行猶予をつけることができるとされているが,罰金の執行猶予は自由刑のそれと異って,その言渡率はきわめて低い。I-161表は,最近の五年間についてその言渡率をみたものであるが,その実数のみならず,比率も逐年減少し,昭和三五年には,五五四人,罰金言渡人員のわずか〇・〇四%を占めるに過ぎない。これは,罰金額について比較的低額のものを選択すれば,あえてその執行を猶予する必要が認められないとされる場合が多いためであろう。

I-161表 第一審終局罰金刑中の執行猶予人員と率(昭和31〜35年)