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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第二章/五/2 

2 西ドイツ

 西ドイツにおいても,今次大戦による敗戦直後は国内は混乱し,犯罪は激増したが,一九四八年以降は国内の秩序は急速に回復し,犯罪も大幅に減少した。最近における主要刑法犯の発生件数および発生率をみると,I-26表のとおり,増加の傾向はみられるが,増加率は比較的低く,悪質な犯罪は少ない。すなわち,最近における犯罪の増加は,主として窃盗の増加によるものであるが,この窃盗のなかには通常の窃盗のほかに,わが国では処罰されていない,いわゆる使用窃盗が含まれている。そして,最近における窃盗の増加は,この自動車または自転車によるものの増加によるところがきわめて大きいのである。しかも,自転車の使用窃盗の事件のなかには,一四歳未満の児童によるものも相当数含まれている。このほか,大幅に増加している犯罪として過失傷害がある。これはわが国の業務上過失傷害にあたるものの増加である。

I-26表 主要刑法犯重・軽罪発生件数等(西ドイツ)(1954〜60年)

 次に,主要刑法犯重軽罪発生件数によってその発生状況をみると,I-27表およびI-9図にみるように,窃盗が最も多く,この点はわが国と変わりがない。この統計は,刑法犯の全部ではなく,統計表に罪名の記載してない一部の罪種は含まれていないので,合計に対する百分率をそのままわが国と比較することはできないが,窃盗の占める割合はわが国より低い。これに反し,第二位の詐欺は,一三・六%でわが国の五・五%に比して,高率を示している。

I-27表 主要刑法犯罪名別発生件数と率(西ドイツ)(1960年)

I-9図 主要刑法犯発生件数の率(西ドイツ)

 第三位は過失傷害であり,これにつづくのは横領である。詐欺,横領がわが国より多いのに対して,傷害がわが国より少なく,恐喝ははるかに少ない点に特色がある。軽傷害は,わが国の暴行にあたるものまで含むが,これに危険な傷害,重い傷害を加えても,全体の五・〇%であって,わが国の傷害と暴行の合計の七・五%と比較してその占める比率は低い。恐喝は,わが国とは規定が異なり,生命または身体に対して現在の危険を加えることをもって脅迫する等の強盗的な手段を使用する恐喝は,強盗的恐喝として強盗と同様に処罰されている。そしてこれと通常の強盗とを合算したものが,この統計に強盗,強盗的恐喝として一括して計上されているが,その数は比較的少ない。通常の恐喝については,発生,検挙等の統計は,統計書には掲載されていないが,裁判統計をみると,その数はきわめて少ない。