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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第二章/五/1 

1 イギリス

 イギリス(イングランドとウェールズ)においては,戦時中から戦後にかけて刑法犯は大幅に増加した。イギリスの正式起訴犯罪(indictable offences)は,ほぼわが国の刑法犯にあたるので,戦前の三年間と最近における発生件数の罪名別の統計を示すと,I-24表のとおりである。これによって明らかなとおり,最も顕著な増加を示しているのは窃盗である。最近では傷害,強盗のような暴力的犯罪が増加しているが,総数に対する比率は約二%を占めているにすぎない。もっとも暴力的犯罪としては,このほかに正式起訴犯罪に属さない暴行も多数あるので,これを考慮に入れる必要がある。

I-24表 正式起訴犯罪の主要罪種別発生件数(イギリス)(1938〜40年,1951〜60年)

 次に,一九六〇年の正式起訴犯罪の主要罪名別の統計とグラフを掲げると,I-25表およびI-8図のとおりである。窃盗が最も多く六五・八%を占め,住居等侵入の二〇・四%がこれに次いでいる。住居等侵入は,主として窃盗を目的とするものと考えられるが,これに窃盗を加えると,全体の八六・二%となる。

I-25表 正式起訴犯罪の主要罪名別発生件数と率(イギリス)(1960年)

I-8図 正式起訴犯罪の主要罪名別発生件数の百分率(イギリス)

 次に,暴力的犯罪が一般的に少ないほか,殺人,傷害致死,強盗殺人のような悪質かつ重大な犯罪のきわめて少ないことがイギリスの犯罪現象の大きな特色で傷める。同表の謀殺は,ほぼわが国の殺人に強盗殺人,同致死を合算したものにあたり,故殺は,ほぼ傷害致死にあたる(両者の合計は,全体の〇・〇六%)。
 結局,イギリスにおける犯罪は,最近数的には増加しているものの,全体としてみれば比較的良好な状態にあるといえよう。