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 昭和59年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/2 

2 少年の保護観察

 (1)概  況
 保護観察所が昭和58年中に新たに受理した人員は,前掲III-47表のとおりで,保護観察処分少年は7万385人,少年院仮退院者は4,945人であり,前年に比べて,保護観察処分少年が6,866人,少年院仮退院者が301人増加している。
 昭和56年以降における受理人員を,保護観察処分少年については,一般事件と交通事件に,少年院仮退院者については,刑法犯,特別法犯,虞犯に大別した上,非行の種類別に見ると,IV-45表のとおりである。58年について,保護観察処分少年では,交通事件(前年比14.3%増),虞犯(同9.0%増),少年院仮退院者では,凶悪犯(同22.6%増),道路交通法違反(同20.2%増),虞犯(同14.4%増),薬物犯罪(同12.8%増)などが増加している。
 IV-46表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年について,その保護処分歴を見たものである。昭和58年の受理人員では,保護処分歴のない者が76.8%と大部分を占めているが,保護観察に付されたことのある者の比率は,前年より若干上昇して20.4%となっている。

IV-45表 保護観察対象者の非行種類別受理人員(昭和56年〜58年)

 昭和58年に受理した,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年について,受理時における年齢を見ると,15歳以下が13.5%,16歳・17歳が39.1%,18歳以上が47.4%となっているが,前年に比べると,15歳以下の年少少年の増加(前年は11.9%)が注目される。また,受理時に中学校在学中の少年も増加しており,58年では,前年より352人増の2,101人となっている。
 (2)保護観察の実施状況
 IV-47表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者のうち,暴力団関係者,暴走族構成員,シンナー等濫用者,精神障害者及び覚せい剤事犯者について,昭和59年3月末日現在の保護観察対象者総数に占めるそれぞれの比率を示したものである。保護観察処分少年では,シンナ一等濫用者が20.8%,暴走族構成員が6.0%,覚せい剤事犯者が3.9%などとなっている。少年院仮退院者では,シンナー等濫用者が26.6%と高い比率を示し,覚せい剤事犯者が9.5%,暴走族構成員が6.9%などとなっている。

IV-46表 保護観察処分少年の保護処分歴別受理人員(昭和56年〜58年)

IV-47表 保護観察対象者の類型別人員(昭和59年3月31日現在)

 交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者の昭和58年における保護観察実施結果状況は,前掲III-52表のとおりであるが,IV-48表は,これを最近3年間において,保護観察処分少年については,一般事件,交通事件別に,少年院仮退院者については,長期処遇,短期処遇別に見たものである。保護観察処分少年に対する解除とは,経過が良好で保護観察を行う必要がなくなったとき,保護観察所長の決定により保護観察を終了させることをいうが,58年に解除になった者の比率は,一般事件の57.0%に対して,交通事件は83.3%と高くなっている。保護処分取消しは,その大部分が再犯などの新たな行為に対し別個の保護処分,刑事処分を受けたために従前の保護観察が家庭裁判所の決定により取り消されたものであるが,58年に保護処分取消しになった者の比率は,一般事件の17.9%に対して,交通事件は6.8%と低くなっている。

IV-48表 保護観察の実施結果状況(昭和56年〜58年)

IV-49表 保護観察の実施期間別結果状況(昭和58年)

 少年院仮退院者に対する退院とは,経過が良好で保護観察を行う必要がなくなったとき,地方更生保護委員会の決定により保護観察を終了させることをいうが,昭和58年に退院になった者の比率は,長期処遇の13.4%に対して・短期処遇は33.7%と高くなっている。戻し収容とは,再度施設内で処遇する必要が生じたとき,家庭裁判所の決定により施設に収容することをいうが,58年において,戻し収容と前述の保護処分取消しを合計した比率は,長期処遇の23.5%に対して,短期処遇は18.1%と低くなっている。
 IV-49表は,昭和58年における保護観察実施結果状況を実施期間別に見たものである。保護観察処分少年では,解除までの期間は,一般事件の場合,1年を超える者が93.6%を占めるが,交通事件の場合,9月以内の者が52.6%を占めている。また,少年院仮退院者では,退院までの期間は,長期処遇の場合,1年を超える者が66.5%を占めるが,短期処遇の場合,9月以内の者が46.7%を占めている。
 (3)交通短期保護観察
 交通犯罪により保護観察に付される少年は,昭和30年代後半から次第に増加し,その処遇に当たっては,従来の個別処遇に併せて講習会や座談会などの集団処遇が実施されていたが,比較的短期間で保護観察が解除される者の割合が逐年増加してきた。そこで,増大する交通犯罪少年に対処するため,法務省保護局と最高裁判所家庭局との間で協議がなされた結果,交通犯罪で保護観察処分の決定を受けた少年のうち,家庭裁判所により短期の保護観察が適当である旨の処遇勧告が付された者については,保護観察官による集団処遇を中心とする特別の処遇を集中的に実施し,特に支障がない限り,3,4か月で保護観察を解除する交通短期保護観察が,52年4月1日から実施されている。
 IV-50表は,最近3年間における交通短期保護観察処分少年の受理・終了状況を示したものである。交通短期保護観察に付された少年は,年々増加しており,昭和58年では4万1,772人で,前年に比べて6,130人増加している。また,同年中に保護観察を終了した少年は4万182人であるが,その約99%は解除によっている。

IV-50表 交通短期保護観察処分少年の受理・終了状況(昭和56年〜58年)

IV-51表 交通短期保護観察処分少年に対する集団処遇実施状況(昭和56年〜58年)

 交通短期保護観察に付された少年に対する処遇は,保護観察官による安全運転に関する討議を中心とする集団処遇と,本人からの毎月1回の生活状況の報告とを主な内容としている。保護観察開始後3,4か月を経過して,その間に車両の運転による再犯がなく,集団処遇に出席し,生活状況の報告を行い,かつ,本人の更生上特に支障がなければ,保護観察の解除が行われる。しかし,6か月を超えても解除できない状態の者に対しては,当該処分をした家庭裁判所の意見を聴いて,交通事件で一般の保護観察処分に付された者と同様の処遇が行われる。最近3年間に実施した集団処遇の回数等は,IV-51表のとおりであり,昭和58年には,実施延べ人員,1回当たり参加人員のいずれも前年より増加している。