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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第2章/第5節/2 

2 少年の保護観察

 少年の保護観察については,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護観察について述べる。
(1) 概  況
 昭和55年における新規受理人員は,保護観察処分少年は5万6,322人,少年院仮退院者は4,063人で,前年に比べて保護観察処分少年で6,291人,少年院仮退院者で623人増加している。
 これらの少年について,昭和53年以降の増加の内訳を,業過を除く刑法犯,道路交通法違反を除く特別法犯,虞犯及び業過と道路交通法違反を加えた交通犯罪の4種に大別した上,非行の種類別で見ると,IV-62表のとおりである。53年に対し55年は,保護観察処分少年は1万1,388人増加しているが,このうち8,088人(71.0%)は交通犯罪の増加によるものである。少年院仮退院者では997人増加しているが,その多くは,財産犯(284人),麻薬・覚せい剤事犯(138人),虞犯(100人)の増加によるものである。また,人員の占める割合は少ないが,麻薬・覚せい剤事犯が,53年に対し55年は,保護観察処分少年で1.6倍,少年院仮退院者で2.5倍に増加しているのが注目される。
 IV-63表は,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年について,その保護処分歴を見たものである。昭和55年の新規受理人員では,保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致などの保護処分歴のない者が大部分(79.1%)であるが,保護観察に付されたことのある者は,前年より増加して18.3%となっている。次に,受理時における年齢層を見ると,年少少年(15歳以下)が9.0%,中間少年(16歳・17歳)が37.9%,年長少年(18歳以上)が53.0%となっている。

IV-62表 保護観察対象者の非行種類別受理人員

IV-63表 保護観察処分少年の保護処分歴別受理人員(昭和54年,55年)

 昭和55年に新たに受理した,交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者の教育程度を見ると,保護観察処分少年を「一般」と「交通」に区分した場合,高校中退者が「一般」で38.9%,「交通」では32.5%で最も多く,高校卒業者は「一般」で8.3%,「交通」で22.4%となっている。
 少年院仮退院者では,長期処遇と短期処遇とに区分すると,高校中退者が長期処遇では23.9%,短期処遇では41.8%,高校卒業者は長期処遇で1.2%,短期処遇で4.8%である。
(2) 保護観察の状況及び終了
 保護観察処分少年及び少年院仮退院者のうち,処遇が困難とされる暴力団関係者,暴走族構成員,シンナー等濫用者及び精神障害者について,昭和55年3月末現在におけるその占める比率を見ると,IV-64表のとおりである。保護観察処分少年にあっては,シンナー等濫用者が12.8%,暴走族構成員が6.9%であり,また,少年院仮退院者では,シンナー等濫用者が19.3%,暴走族構成員が8.0%,暴力団関係者が2.5%となっている。保護観察処分少年及び少年院仮退院者共に,シンナー等濫用者の占める率が高い。

IV-64表 保護観察対象者の非行の態様等による類型別人員(昭和56年3月31日現在)

 交通短期保護観察を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者の,昭和55年における保護観察終了者の終了事由は,前掲III-77表に示したとおりであるが,IV-65表及びIV-66表は,これを最近3年間について見たものである。55年は,保護観察処分少年では,解除による者が過半数の62.0%を占め,再犯等のため新たな処分を受けたことにより保護処分が取り消されて終了した者は12.8%であり,少年院仮退院者では,退院が17.2%,保護処分取消しが20.4%である。両者共に保護処分取消しの占める率が増加してきている。

IV-65表 保護観察処分少年の終了事由別人員(昭和53年〜55年)

IV-66表 少年院仮退院者の終了事由別人員(昭和53年〜55年)

 保護観察処分少年を「一般」と「交通」に分け,少年院仮退院者を長期処遇と短期処遇とに分けて,終了事由と保護観察を実施した期間について見てみると,IV-67表及びIV-68表のとおりである。保護観察処分少年では,解除の占める率は,「一般」では47.4%であるが「交通」では79.5%の高率であり,また,保護処分取消しの占める率も,「一般」では17.7%であるが「交通」では6.9%と低い率を示している。解除までの保護観察の実施期間は,「一般」では1年を超え1年6月以内であるものが47.6%を占めるが,「交通」では6月を超え9月以内であるものが44.5%を占めており,「一般」に比べて「交通」は,解除の占める率に加えて,解除までの期間の短い者の率が高い。次に,少年院仮退院者では,退院の占める率は,長期処遇では10.2%であるが短期処遇では31.5%と高く,また,不良措置である戻し収容と保護処分取消しの占める率は,長期処遇では23.1%であるが短期処遇では17.1%である。退院までの保護観察実施期間は,長期処遇では,1年を超え1年6月以内であるものが31.7%を占めるが,短期処遇では,6月を超え9月以内であるものが38.7%を占めており,長期処遇に比べて短期処遇の者は,退院の占める率が高い上に,退院までの期間が短い者の占める率が高くなっている。

IV-67表 保護観察処分少年の終了事由別・保護観察実施期間別人員構成比(昭和55年)

IV-68表 少年院仮退院者の終了事由別・保護観察実施期間別人員構成比(昭和55年)

(3) 交通短期保護観察
 交通犯罪によって保護観察に付される少年は,昭和30年代後半から次第に増加し,その処遇に当たっては,従来の個別処遇に併せて講習会や座談会などの集団処遇が実施されていたが,比較的短期間で保護観察が解除される者の割合が逐年増加してきた。そこで,増大する交通犯罪少年に対処するため,法務省と最高裁判所家庭局との間で協議がなされた結果,交通犯罪で保護観察処分の決定を受けた少年のうち,短期の保護観察がふさわしい旨の家庭裁判所の処遇勧告が付された者については,保護観察官による集団処遇を中心とする特別の処遇を集中的に実施し,特に,支障がない限り3,4か月で保護観察を解除する交通短期保護観察制度が,52年4月1日から実施されている。
 昭和55年に交通短期保護観察に付された少年は,3万638人であり,最近3年間における受理・処理状況は,IV-69表のとおりである。
 交通短期保護観察に付された少年に対する処遇は,保護観察官による安全運転に関する討議を中心とする集団処遇と,本人が保護観察官に対して行う毎月1回の生活状況の報告とを,主な内容としている。保護観察開始後3,4か月を経過して,その間に車両の運転による再犯がなく,集団処遇に出席し,生活状況の報告を行い,かつ,本人の更生上特に支障がなければ,保護観察の解除が行われる。しかし,6か月を超えても解除できない状態の者に対しては,当該処分をした家庭裁判所の意見を聴いて,交通事件で一般の保護観察処分に付された者と同様な処遇が行われる。
 昭和55年に実施した集団処遇の回数等は,IV-70表のとおりであり,同年に保護観察が終了した者の98.9%は,解除によっている状況である。

IV-69表 交通短期保護観察処分少年の受理・処理状況(昭和53年〜55年)

IV-70表 交通短期保護観察処分少年に対する集団処遇実施状況(昭和53年〜55年)