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1 最近の公的統計から見た特質 ドイツ連邦共和国における金融機関強盗は,第1章で述べたように,最近2年間減少傾向にあり,1979年は496件であるが,その事犯及び犯人像の特質を示すと,II-42表ないしII-44表のとおりである。
金融機関強盗における銃器使用率は70.6%であり,我が国における6.6%の10倍を超えていることは前記のとおりであるが,銃器を実際に発砲した事件は全事件の1.6%(銃器使用事件の2.3%)にすぎず,銃器が被害者側の反抗抑圧のための脅迫手段として使用されただけの事件が大部分であることを示している。また,未遂事件が全事件の31.9%を占めており,前記のとおり,我が国の金融機関強盗で現金強取に失敗した未遂事件が34.9%であるのと似た傾向を示している。 発生地域の人口状況を見ると,大都市圏(人口50万人以上)が28.0%で最も多く,中都市圏(人口10万人以上50万人未満)の21.6%を併せると,事件の約半数が人口10万人以上の大・中都市圏で発生しており,金融機関強盗の都市型犯罪としての特質を示しているが,他方,人口2万人未満の地域が26.2%とかなり多いのは,我が国の場合(1.2%)と異なっており,同国における金融機関強盗の全国的な拡散化傾向を示すものであろう。 II-42表 金融機関強盗事犯の特質別構成比ドイツ連邦共和国(1979年) II-43表 金融機関強盗犯人の特質別構成比ドイツ連邦共和国(1979年) II-44表 金融機関強盗による被害金額別構成比ドイツ連邦共和国(1979年) 犯人の性別については,92.5%が男性であるが,女性が占める比率(7.5%)は,我が国の場合(1.2%)に比べてかなり高い。単独犯が35.1%であり,換言すれば,共犯による犯行が6割以上を占めていること,前科者が80.2%を占めていること,及び25歳未満の若年成人・少年が45.5%を占めていることから見て,同国の金融機関強盗は,概括的に言えば,共犯型・累犯者型・若年型であり,我が国における単独犯型・初犯者型・成人型と対照的である。被害金額は,1万マルク以上10万マルク未満が67.2%で最も多く,1,000マルク以上1万マルク未満の22.2%がこれに次いでいる。1マルクを120円として換算すると,同国における120万円未満の被害金額の占める比率は26.4%であり,我が国でこれにほぼ相当する100万円未満の被害金額は現金被害があった110件のうち48.2%(53件)であるのに比べると,被害金額は我が国の場合より幾分高額である。 フランスの金融機関強盗については,ドイツ連邦共和国のように詳細な統計はないが,金融機関強盗(1979年で1,474件)とも関連する銃器強盗(同年で4,993件)について,その地区別発生件数を見ると,パリ地区が44.7%を占めており,この種事犯の都市型犯罪としての特質が顕著に現れているように見える(II-45表)。 この銃器強盗の犯人の特質を見ると,単独犯が37.2%を占め,換言すれば,共犯による犯行が6割以上であり,年齢層では25歳以下の若年成人・少年が55.1%を占めているので,概括的に言えば,フランスも共犯型・若年型の特質を示しているようである(II-46表)。 金融機関強盗の被害金額は,1979年の1,474件について,合計約6,500万フラン(1フラン52円換算で約34億円)であり,1件当たり約4万フラン(約200万円)である(II-47表)。 なお, ドイツ連邦共和国とフランスでは,金融機関強盗のほかに,現金輸送車襲撃事件が多発しており,1979年において,ドイツ連邦共和国では137件,フランスでは86件発生している(我が国では,昭和55年において2件である。)。また,フランスでは,銃器強盗4,993件のうち,自動車等を使用する機動的な武装集団による「ホールドアップ」という組織犯罪が1979年において1,233件(24.7%)を占め(前記II-45表),また,同国の警察統計書によると,同年において銃器強盗に伴う殺人が31件,殺人未遂が120件発生している(LaCriminaliteenFrance,1979)ことから見て,フランスの強盗事犯は,最近,かなり組織化・凶悪化していることがうかがえる。 II-45表 銃器強盗の地区(region)別認知件数フランス(1979年) II-46表 銃器強盗犯人の特質フランス(1979年) II-47表 金融機関強盗による被害金額フランス(1979年) アメリカには,金融機関強盗に関する最近の統計資料は,前記II-4表に計上したものしかないが,司法省の研究(「アメリカの強盗犯罪」,1971年)によると,銀行強盗の犯人は,かっては常に成人の,高度に熟練した職業的犯罪者であったが,最近は若年の素人で攻撃的な犯人が出現するようになったと指摘されている。なお,アメリカでは,1979年において,強盗の検挙人員約13万人のうち,21歳未満の青少年層が54.5%(約7万人)を占めている(第4編第3章参照)。 |