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 昭和56年版 犯罪白書 第2編/第1章/第2節 

第2節 諸外国における動向

 アメリカ,フランス及びドイツ連邦共和国における強盗及び金融機関強盗の認知件数及び検挙率について,最近4年間の推移を見ると,II-4表のとおりである。アメリカでは強盗は1978年から増加に転じ,1979年には約47万件に達しているが,金融機関強盗も同じような傾向を示し,1979年には7,937件(強盗総数の1.7%)に達している。フランスでは,強盗,金融機関強盗とも一貫して増加を続けており,1979年には強盗は約3万2,000件,金融機関強盗は1,474件(強盗総数の4.6%)に達している。ドイツ連邦共和国では,強盗は3年連続の増加を続け,1979年には約2万2,000件に達しているが,1977年まで増加傾向にあった金融機関強盗は1978年から減少に転じ,1979年には496件(強盗総数の2.3%)になっている。
 強盗の検挙率を見ると,1979年において,アメリカ24.9%,フランス27.3%, ドイツ連邦共和国52.7%であり,我が国の76.3%に比べてかなり低くなっている。しかし,金融機関強盗の検挙率について,データのあるドイツ連邦共和国の場合を見ると,常に,強盗の検挙率を超えているだけでなく,最近2年の上昇傾向は著しいものがあり,1979年には72.8%に達し,我が国の同年における検挙率66.9%を超えている。ドイツ連邦共和国におけるこの金融機関強盗の減少と検挙率の上昇について,同国の警察統計書は,「1978年に導入された金融機関における予防措置(カメラ監視装置の設置と保管現金の減少)は,金融機関強盗の発生件数の減少に寄与しただけでなく,検挙率の向上にも寄与した」と述べている(Po1izei1iche Kriminalstatistik,1979)。

II-4表 強盗及び金融機関強盗事犯の認知件数及び検挙率     (1976年〜79年)

 強盗及び金融機関強盗における欧米3箇国の銃器使用事件を,我が国と対比して見ると,II-5表のとおりである。強盗については,銃器使用事件の比率は,1979年において,アメリカ39.7%,フランス15.6%,ドイツ連邦共和国10.6%に対し,我が国は0.4%であり,また,金融機関強盗については,ドイツ連邦共和国の70.6%に対し,我が国は6.6%であり,我が国の強盗及び金融機関強盗における銃器使用の比率は,欧米に比べて著しく低い。
 なお,イギリスには金融機関強盗の発生に関する資料はないが,「銃器使用の銀行・郵便局強盗」の1976年から1979年までの認知件数は,順次123件,147件,105件及び199件となっている(CriminalStatisticsEnglandand Wales,1979)。

II-5表 強盗及び金融機関強盗事犯における銃器使用件数(1979年)