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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/二/2 

2 帰住予定地の環境調査調整

 仮釈放の準備は,本人が矯正施設に入るとすぐに始められる。その一つが,帰住予定地の環境状態の調査調整である。
 本人が矯正施設に収容されると間もなく,施設の長は,本人の帰住予定地の保護観察所に本人の身上調査書を送る。それを受けた保護観察所では,さっそく担当者をきめて環境の調査調整を始める。担当者には保護司が指名されることが多い。担当者は,身上調査書を参考にして,帰住予定地に行って,保護者の家庭状況や近隣の状況,本人が帰って来たらどんな生活をすることになるかなど,環境の状態を胸におさめ,家族や友達やその他関係者と話し合いをして,本人の帰住が円滑にできて更生の生活ができるように,少なくとも再犯のおそれがなくなるように,環境上の問題点を調整する。この調査調整は,一日でひととおりできることもあるが,一般に犯罪者の身上は複雑で問題も多いので,数日にわたることも少なくない。そのために担当者が施設に出向いて本人に面接することもある。状況がわるくて調整が進まず,これでは本人をここに帰住させるわけには行かないという判断に立ち至ることもある。
 調査調整の結果は報告しなければならない。報告はあまり遅延するわけには行かないから,調整が完了しない場合でも,担当者は適当な時期に報告書をつくって保護観察所に提出する。保護観察所は,これを矯正施設と地方更生保護委員会とに送付する。担当者は報告書を出した後も,なお,その環境状態を観察し,必要があれば調整を重ね,その結果は追報告書にとりまとめて提出する。このようにして,在監者や在院者の帰住予定地の環境状態は,矯正施設と地方更生保護委員会とに知らされ,施設では処遇の参考資料となり,委員会では仮釈放審理の資料となっている。実情をみると,昭和三四年中に受理した環境調査調整報告書は一二万九千通で(V-3表),このなかには,委員会が審理の段階で特に委嘱したために行なわれた調査調整の結果の報告が,三千余通含まれている。

V-3表 環境調査調整報告書の受理件数―地方更生保護委員会(全国)(昭和34年)