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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第三章/六/1 

六 婦人補導院

1 入院者の増減とその特質

 昭和三三年三月売春防止法の改正に伴い,婦人補導院が設置されることとなった。発足の当初は,栃木,和歌山および麓の三つの女子刑務所に婦人寮を付設して,収容を開始したのであるが,同法が軌道にのってくるにしたがい,翌年の五月には大阪婦人補導院が新しくもうけられ,昭和三五年に入ると,三月には東京婦人補導院,六月には福岡婦人補導院と順次施設が完成し,本来の補導処分としての処遇が行なわれるようになった。
 婦人補導院は,昭和三三年五月一五日から収容を開始したのであるが,それ以降,昭和三五年一二月末日までの入院者数は,総計七八二人で,このときまでに,すでに退院または仮退院した者の総数は,五六一人である。その間の入院ならびに退院の状況は,IV-18表に示すとおりである。新入院者についてみるに,その数は年ごとに増加の傾向がみられる。すなわち,収容開始の年は期間が一年に満たないのでさておくとして,昭和三五年の新入院者数は前年の約一・五倍となり,これらを収容人員の面からみると,昭和三五年の一日平均収容人員は,前年の約一・八倍で,収容を開始した昭和三三年の四・三倍となっている。この収容人員の増加の傾向は,一面からみると,売春防止法による補導処分の言渡が,軌道にのってきたことを示すものでもあろう。

IV-18表 婦人補導院の入・出院者数等(昭和33〜35年)

 婦人補導院においては,新たに入院した者について,分類調査を行なっているが,その結果から入院者の特質をのぞいてみよう。IV-19表に示すように,婦人補導院への入院度数からみると,二度以上の入院者が,昭和三四年は同年の新入院者総数の約一五%,昭和三五年には約二七%と上昇の傾向を示し,年齢についてみるに,二〇才代の者が最も多く,総数の約五五%,特に注目をひくのは,四〇才以上の者が約一五%を占めていることであり,売春経験年数は,一年ないし四年が最も多く,これに五年ないし九年が続き,両者をあわせると,総数の約七八%にあたり,知能指数からみると,約七六%が普通以下の知能程度で,精神状況についてみるに,約五七%が正常または準正常でなく,精神薄弱者が総数の約四八%占めている。さらに性病の罹患率からみると,約三六%が性病にかかっている。

IV-19表 婦人補導院新入院者の性状(昭和33〜35年)