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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第三章/三/1 

三 刑務所および少年刑務所

1 受刑者の増減とその特質

(一) 新受刑者の数

 昭和三四年の新受刑者は,四五,二七一人で,これは戦後最低を記録した昭和三三年の四六,三九二人よりもさらに一,一二一人少ない数である。ここで,新受刑者の戦後の推移を示せばIV-3図のとおりである。新受刑者の数は,終戦を境に急激にふえ,昭和二三年には,七〇,七二七人に達したが,その後は,昭和二九年の四八,一六四人に至るまで漸減の傾向をたどり,昭和三〇年にやや増加したものの,翌年からはゆるいカーブをえがきながら再び減少の一途をたどっている。ちなみに,昭和三四年の四五,二七一人という数は,たとえば,戦前の昭和一〇年の新受刑者四一,〇九三人にくらべてまだかなりこれを上回っているようではあるが,これを当時の人口(一四才以上)に対比すれば,人口一〇〇万人に対して,昭和一〇年は九一〇人であったのに対し,昭和三四年は六九八人であって,わが国の人口との関連において考えるならば,最近の新受刑者の数は戦前のそれにくらべ,むしろ減っているということができる。

IV-3図 年次別新受刑者数(昭和20〜34年)

(二) 新受刑者の刑名,刑期別構成

 新受刑者四五,二七一人について,まず,これを刑名別にみると,懲役刑が四四,九〇五人で,圧倒的多数を占め,九九・二%の高率である。次いで,禁錮刑の一八三人(〇・四%),拘留刑の一五三人(〇・三%),死刑(執行を受けたもの)の三〇人(〇・一%),の順となっており,ここ数年のところ,刑名別構成はほとんど変わりないといってよい。
 次に,刑期別についてみよう。
 IV-4表は,昭和三〇年以降五カ年間の懲役新受刑者についての刑期別人員の百分率を求めたものである。これによって明らかのように懲役受刑者の過半数が刑期一年以下の者で占められ,二年以下を加えると約八三%がこれに含まれることがわかる。しかし,わずかながらも,比較的短期の刑の占める比率が低下し,比較的長期の刑の占める比率が上昇していることがうかがえる。

IV-4表 懲役受刑者の刑期別人員の百分率(昭和30〜34年)

(三) 新受刑者の罪名別構成

 昭和三四年の新受刑者罪名別構成はIV-5表のとおりである。このうち,主要な罪名別に昭和三〇年以降の傾向を比較してみると,IV-6表となる。

IV-5表 新受刑者の罪名別・性別人員と率(昭和34年)

IV-6表 新受刑者の罪名別人員と指数(昭和30〜34年)

 右の表において明らかなように,新受刑者が逐年漸減しているとはいえ,その質的構成はかなり憂うべき傾向にあることが知られる。すなわち,窃盗,詐欺,横領等にみられる横ばいないし減少の傾向に対し,猥褻姦淫,恐喝,殺人,放火,暴力行為等処罰に関する法律違反といったいわゆる凶悪,粗暴な犯罪にいちじるしい増加がみえることがそれである。この傾向は,すでにみたように未決拘禁者においても顕著なものがあり,刑務所の秩序に重大な影響をおよぼしている(IV-3表参照)。

(四) 新受刑者の犯歴

 昭和三四年の新受刑者中,初犯者は一九,六八二人で,累犯者との比率は,前年におけると同様,四三対五七の関係にある(IV-4図参照)。

IV-4図 新受刑者の初犯・累犯別百分率(昭和34年)

 IV-7表は,新受刑者の刑事処分歴および保護処分歴について調べたものであるが,これによれば,新受刑者四五,二七一人中,じつに三五,九二四人が非行または犯罪の前歴をもっており,不良前歴のない者は九,二四七人,つまり全体の二〇・四%を占めるにすぎない。

IV-7表 新受刑者の刑事処分前歴・保護処分前歴別人員(昭和34年)

(五) 新受刑者と年齢

 昭和三四年の新受刑者の年齢構成はIV-5図に示すとおりである。また,IV-8表は最近五年間における新受刑者の年齢構成を百分率によって比較したものである。これによれば,各年とも比率のうえにほとんど大きな差異はみられない。しかし,前年との比較において,昭和三四年は,二〇才未満の者の占める比率がやや高くなっていることが注目される。

IV-5図 新受刑者の年齢別百分率(昭和34年)

IV-8表 新受刑者の年齢別百分率(昭和30〜34年)