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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第一章/二/5 

5 執行猶予取消者の再犯期間

 執行猶予を取り消された者のうちから,猶予期間内に再犯を犯した者のみを選び,これについて,その再犯が執行猶予の言渡の日からどの位の期間を経て行なわれたかをみたものが,II-21表である。これによると,昭和三四年においては,再犯を犯して執行猶予を取り消された者七,六五五人のうち,一四・七%が三月以内に,一七・五%が三月をこえ六月以内に,二八・一%が六月をこえ一年以内に,それぞれ再犯を犯している。これを累積的にみると,六月以内には三二・二%,一年以内には六〇・三%が再犯を犯したことになる。これをみても,執行猶予中の再犯は,言渡の日から一年以内が最も危険な時期といえるのであるが,昭和三二年から昭和三四年まで,年とともに一年以内の再犯者の比率がわずかずつではあるが逓減の傾向を示しているのは,好ましい傾向といえるであろう。再犯期間は長ければ長いほど,望ましいものとしなければならないからである。

II-21表 執行猶予を取り消された者の執行猶予の言渡時から再犯時までの期間別人員の率(昭和32〜34年)

 執行猶予の言渡は,犯人本人に対して強い感銘力を与えるはずのものであるから,常識的にみると,執行猶予言渡の日から期間が経過すればするほど感銘力が薄れ再犯を犯す危険性が高まるが,期間があまりたたない間はその感銘力のために再犯を犯すおそれが少ないと一応考えられる。しかし,右の統計は,この常識に反して,一年以内に約六〇%もの再犯者を出していることは,注目されなければならない。
 次に,執行猶予取消者のうちで猶予期間内に再犯を犯したものにつき,保護観察付とそうでないものとに分け,それぞれ再犯期間をみたものが,II-22表である。これによると,保護観察のつかないものが一年以内に再犯を犯した比率(累積)は,昭和三二年の六二・二%から昭和三四年の五九・三%へ逓減しており,また,保護観察中のものは,昭和三二年の七五・五%から昭和三四年の六二・三%と逓減しているが,保護観察中のものがそうでないものに比して,一年以内の再犯率が高いことが注目されなければならない。保護観察の本来の趣旨からいえば,保護観察中のものは再犯率が低くなければならないはずであるし,また,再犯を犯したとしてもその期間は長くなければならないはずであるが,これが逆の傾向をみせているのである。もっとも,昭和三二年の七六%から昭和三四年の六二%と,約一四%の減少をみせていることは,徐々ではあるが保護観察の運用が軌道にのりつつあることを示すものといえるであろう。

II-22表 執行猶予を取り消された者の再犯までの期間別人員と率(昭和32〜34年)