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 昭和36年版 犯罪白書 第一編/第五章/一 

一 西ドイツ

 西ドイツは,今次大戦中に国内が戦場となったため,敗戦直後は崩壊状態に陥り,犯罪は激増した。しかし,秩序は次第に回復し,一九四八年以降国内の秩序は急速に整備されて,犯罪も大幅に減少した。最近における主要刑法犯の発生件数および発生率をみると,I-37表およびI-12図にみるように,増加の傾向にはあるが,その増加率はわが国と比較すると低く,また悪質な犯罪は比較的少ない。

I-37表 主要刑法犯重・軽罪発生件数等(西ドイツ)(1954〜59年)

I-12図 主要刑法犯重・軽罪発生件数および発生率の指数(西ドイツ)(1954〜59年)

 次に,主要刑法犯重・軽罪発生件数によって,その発生状況をみると,I-38表およびI-13図にみるように,窃盗が最も多い点は,わが国と同じである。もっとも,この統計は刑法犯のすべてではなく,統計表に罪名の記載していない一部のものが含まれていないので,合計に対する百分率をそのままわが国と比較することはできないが,窃盗の占める比率は,わが国より低い。これに反して,発生件数の第二位を占める詐欺は,件数において二一万件をこえ,わが国の詐欺の九万件弱の二倍をこえている。また,横領も五万八千余件と多く,人口に対する率によれば,さらにわが国との差が大きくなる。このように,詐欺,横領がわが国より多いのに対して,恐喝はわが国よりはるかに少ない。恐喝は,わが国とは規定のし方が異なり,身体に対して現在の危険を加えることをもって脅迫する等の強盗的手段を用いる恐喝は,強盗的恐喝として強盗と同様に処罰される。そして,この強盗的恐喝と通常の強盗と合算したものがこの統計に計上されているが,その数は比較的少ない。

I-38表 主要刑法犯発生件数と率(西ドイツ)(1959年)

I-13図 主要刑法犯発生件数の率(西ドイツ)(1959年)