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I-28表は,昭和三〇年以降について家庭裁判所が終局決定をした総数と,そのうち前に処分を受けた者の数およびその処分の内訳を示したものであるが,これによると前に処分を受けた者(以下前歴少年という)の実数は,昭和三〇年以降増加の一途をたどっており,また,終局決定総数のうちで占める比率も,昭和三〇年の三〇・七%から昭和三四年の三五・八%へとほぼ漸増の傾向をみせている。次に,前歴少年の前歴の内訳をみると,昭和三四年において最も比率の高いのは,不開始の三五・二%であり,これに次ぐものは,不処分の二三・二%,保護観察の二一・五%,少年院送致の一一・七%である。これに反して低率を示すのは,教護院等送致の〇・八%,刑事処分の五・一%である。これらの比率の昭和三〇年以降の推移をみると,漸増の傾向にあるのは,不開始と刑事処分であり,ほぼ同じ水準を示すのは,不処分と教護院等送致であり,漸減の傾向にあるのは,保護観察と少年院送致である。なお,昭和三二年から昭和三四年までの三年間の合計についてみると,前歴少年の前歴のうち不開始,不処分はその約五八%におよんでいる。
I-28表 家庭裁判所の終局決定総人員中,前処分のあった人員および前処分の種類別人員と率(昭和30〜34年) 前歴少年の前歴の処分時から今回の非行時に至るまでの期間をみると,I-29表のとおりであって,これを累積的にみたのがI-30表である。これによると,一月以内に再非行を犯すものが約八%,六月以内(累積)では約三七%,一年以内(累積)では約五五%であって,きわめて短期間内に再非行におよんでいることがわかる。しかも,昭和三〇年以降短期間で再非行に陥った者の比率が,わずかながら増加の傾向にあることがうかがわれるのである。I-29表 前歴のある少年の数と前回終局決定後今回非行までの期間別人員の百分率(昭和30〜34年) I-30表 前回終局決定後今回非行までの期間別人員の累積百分率(昭和30〜34年) 次に,法務省刑事局が昭和三四年一月一日から昭和三五年一二月末までの二カ年に,全国の地方検察庁のうち一一カ庁で作成した少年調査票カードに基づいて集計した資料により,少年の再非行状況を調査したところを紹介すると,その概要は次のとおりである。この少年調査票カードは,検察庁が受理した少年事件のうち道交違反を除くすべての事件について作成されたものであるが,そのうち約三分の一を無作為抽出した一三,〇三五枚のなかで二枚以上のカードが作成されたもの,すなわち,非行をくり返した者を選別し,この選別されたもの一,三四五人のなかから,さらに,初回のカードの前歴欄に前歴の記載のあったものを除いた五五五人を調査の対象としたものである。すなわち,初回受理のときに前歴の記載のない者であって,しかも初回のカードが作成された後に再び罪を犯し,検察庁で少年調査票カードを作成した者五五五人(前記一,三四五人に対する四一・二%)を対象としたものである。まず,右の五五五人を再犯少年と呼ぶとすれば,再犯少年の累犯数と初犯時の年齢別の区別をみると,I-31表のとおりである。これによると,二犯を犯したものは再犯少年総数五五五人のうち八四・七%を占める四七〇人であり,三犯はその一三%を占める七二人,四犯以上はその二・三%を占める一三人である。四犯以上が比較的少ないのは,調査期間が二カ年の短期間のためと思われる。また,再犯少年の初犯時の年齢層別をみると,中間少年が総数の三八・二%の二一二名で最も多く,これに次ぐのが年少少年の三三・三%の一八五人,最も少ないのは,年長少年の二八・五%の一五八人である。年長少年が最も少ないのはやや意外の感があるが,これは成人層に繰り入れられる割合が高いためであって,たとえ,再犯を犯したとしても少年調査票カードの対象にならない場合が少なくないためと思われる。さらに,二犯までにとどまっているものの率を年齢層別にみると,年長少年が八九・二%で最も高く,これに次ぐのが中間少年の八九・一%,最も低いのが年少少年の七五・七%である。二犯まででとどまる率が低いということは,三犯以上の者の率が高いということであるから,年少少年の三犯以上の者が最も高いこととなる。 I-31表 再犯少年の初犯時年齢別人員と率(昭和34,35年) 次に,二犯を犯した者四七〇人について,初犯の罪名と二犯のそれとの相互の間にどのような関連があるかをみたのが,I-32表である。もっとも,ここでは数個の罪名で処断された者については同一人でも二以上に計上されている。I-32表 二犯者の初犯・二犯別罪名の比較(昭和34,35年) これによると,初犯時の罪名と二犯時の罪名の組合せの多いのは,総組合せ数六六五のうち,窃盗-窃盗が一九四,窃盗-恐喝が四四,恐喝-窃盗が二〇,恐喝-恐喝が一九,傷害-傷害が一九,窃盗-暴行が一七,窃盗-傷害が一五,傷害-窃盗が一三,窃盗-詐欺が一三,暴行-恐喝が一一である。窃盗-窃盗の組合せが圧倒的に多いということは,少年犯罪のなかで,窃盗が数的に最も多いこと,それが犯しやすい罪種であること,また,窃盗は慣行的になりやすい類型であることを示しているといえよう。ところで,比較的繰り返しの多い罪種は,窃盗および恐喝ということになるので,窃盗,恐喝についてみると,初犯時の罪名のなかで窃盗の占める比率は,総組合せ数六六五のうち五〇・八%の三三八,恐喝のそれは九・七%の六五である。ところが二犯時の罪名のなかで,窃盗の占める比率は,四三%の二八六,恐喝のそれは一五・四%の一〇三であるから,窃盗の占める比率は初犯時から二犯時へ移行するにつれて減少し,恐喝の占める比率は逆にいちじるしく上昇していることがわかる。これは,初犯の窃盗から二犯における他の罪種への移行は,その多くが窃盗-恐喝の類型をとっているためである。ちなみに,初犯窃盗の総数三三八の二犯への移行状況をみると,暴行,傷害,脅迫,恐喝,暴力行為等処罰法違反の五者を仮に粗暴犯と呼ぶとすれば,窃盗-窃盗が一九四(五七・三%),窃盗-粗暴犯が八四(二四・八%),窃盗-その他が六〇(一七・九%)であって,窃盗から恐喝を含めた粗暴犯への移行が比較的多いことを示している。また,初犯者が粗暴犯であるものの総数一七九の二犯への移行状況をみると,粗暴犯-粗暴犯が九七(五四・一%),粗暴犯-窃盗が四六(二五・七%),粗暴犯-その他が三六(二〇・一%)であって,初犯が粗暴犯であるものは,二犯も粗暴犯へ移行する割合の高いことを示している。次に,三犯まで犯した者七二人について,その初犯時の罪名と二犯時の罪名との組合せをみると,組合せ総数一二七のうち,窃盗-窃盗が最も多く,総組合せのうちの二二・〇%を占める二八であり,これに次ぐものが窃盗-恐喝で,その八・五%を占める一一である。そして,初犯時が窃盗であって三犯まで犯行をかさねたもの六〇のうち,二犯時における罪種の移行状況をみると,窃盗-窃盗が二八でその四六・六%,窃盗-粗暴犯が二二でその三八・三%,窃盗-その他が一〇で一六・八%となっており,二犯にとどまる場合よりも,窃盗-窃盗の割合が低く,逆に粗暴犯への移行の割合が高率となっている。また,初犯時が粗暴犯であって三犯まで犯行をかさねたもの二九のうち,二犯時における罪種の移行状況をみると,粗暴犯-粗暴犯が二二でその七五・八%,粗暴犯-窃盗が六でその二〇・六%,粗暴犯-その他が一でその三・六%となっており,この場合には,窃盗への移行が低率で,粗暴犯への移行の割合がきわめて高くなっている。したがって,三犯まで犯した少年の初犯から二犯への移行の形態の特徴は,粗暴犯-粗暴犯および窃盗-粗暴犯の類型が多く,そのなかでも,特に,初犯-二犯の関連における粗暴犯-粗暴犯の組合せは,事後における再犯の繰り返しの可能性という点からみて注目されるのである。次に,再犯少年について,初犯非行の終期から次回の非行の時期までの期間をみると,二犯者の四六〇人については,I-33表のとおりである。これによると,その期間が六カ月以内(累積)のものが,六三・〇%,三カ月以内(累積)のものが,三二・六%である。ところが,三犯者の七二人について,その初犯と二犯との間の期間をみると,I-34表に示すように,六カ月以内(累積)のものが,八一・九%,三カ月以内(累積)のものが,五四・一%であるから,犯数が多くなれば再犯期間が短縮されることがうかがわれる。 I-33表 二犯者の累犯期間別人員と率(昭和34,35年) I-34表 三犯者の初犯と二犯との間の累犯期間別人員と率(昭和34,35年) |