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 昭和36年版 犯罪白書 第一編/第二章/五 

五 再犯者,累犯者等による犯罪

 累犯者,前科者等による犯罪については,昭和三五年度版の犯罪白書(四四頁以下)で説明したが,本年はその後の統計によって再犯一般について述べることとする。
 まず,犯罪統計書によって,刑法犯検挙人員の初犯・再犯別をみると,I-16表のとおりである。ここでいう再犯とは,犯罪を犯して警察に検挙されたことがある者が,その後再び犯罪を犯して検挙された場合をいうとされている。すなわち,刑法の規定する累犯者とはちがって,最広義の意味の再犯である。これによると,成人における再犯者の占める比率は,昭和二九年の約三三%から毎年増加して昭和三四年には約三八%となっている。少年については再犯者の率は一般に低いが,昭和二九年の約二五%からほぼ毎年増加して昭和三一年には約三一%となり,その後はやや減少して昭和三四年には約二九%となっている。

I-16表 刑法犯成人・少年別,初犯・再犯者別検挙人員(昭和29〜34年)

 次に,司法統計年報によって刑法犯通常第一審有罪被告人の初犯者・前科者別をみると,I-17表に示すように,前科者が有罪総数のうちで占める比率は,昭和二九年の約五〇%から昭和三四年の約五六%へと増加の傾向をみせている。しかし,同じ有罪被告人の初犯者・累犯者別をみると,I-18表に示すように,累犯者の占める比率は増加の傾向はみられず,むしろ昭和二九年の二九・六%から昭和三四年の二七・七%へと減少をみせているのである。

I-17表 刑法犯通常第一審有罪人員中の初犯者・前科者数等(昭和29〜34年)

I-18表 刑法犯通常第一審有罪人員中の初犯者・累犯者数等(昭和29〜34年)

 自由刑の実刑を受け,刑務所に新入した者の初犯者・累犯者別をみると,I-19表に示すように,昭和二九年以降若干の増減はあるが,最近における累犯者の占める比率は,五六%から五八%の間を上下し,特に増加の傾向はみられない。

I-19表 新受刑者中の初犯者・累犯者数等(昭和27〜34年)

 次に刑務所に入所した累犯者の入所度数を主要罪名別に,かつ,入所度数三度以上の者を昭和三四年についてみると,I-20表に示すように,新受刑者総数のうち入所度数三度以上の者は,三八・八%を占め,累犯化傾向が強いことをうかがわせている。罪名別にみると,入所度数三度以上の者の占める比率の高いものは,住居侵入の五九・一%,賍物関係の四九・一%,窃盗の四四・五%,詐欺の四二・三・%である。これらのすべてが犯罪常習者であるかどうかは,なお検討を要するが,このなかには多数の常習者が含まれているものと推測される。

I-20表 新受刑者中の主要罪名別累犯者数等(昭和34年)