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 昭和36年版 犯罪白書 第一編/第一章/二/1 

1 概観

 昭和三四年における特殊犯罪を主要罪種別に区分し,検察庁新受および処理区分別をみると,I-5表のとおりである。

I-5表 特殊犯罪の主要罪種別検察庁受理・処理人員等(昭和34年)

 特殊犯罪を罪種別にみると,交通犯罪が数的に最も多い。交通犯罪の大部分を占める道交違反は,昭和三二年までは急激に増加したが,その後はほぼ同じ水準にあり,昭和三四年も前年度に比し(昭和三五年度版犯罪白書一三一頁参照)約一・一%の増加を示しているにすぎない。しかし,自動車,オートバイ等が毎年増加している状況を考えると,実際の犯罪が横ばい状態にあるとは考えられない。これは,主として警察官の人的な制約等の事情で,違反事件のうち行政的措置で済まされ送検されないものが相当数あるためともみられよう。業務上過失致死傷はそのほとんどが交通関係であるため,交通犯罪の項目に加えたが,この種の事件は最近激増の傾向にあり,昭和三四年は前年にくらべて新受人員は約二七・五%の増加をみせている。
 次に数的に多いのは,選挙犯罪であって,昭和三四年には激増している。これは,主として同年に多数の選挙が行なわれたためである。
 その他,財政経済関係犯罪,麻薬犯罪,覚せい剤犯罪および売春防止法違反関係犯罪は,I-5表に示すように,昭和三三年までの状況と比較して,特に大きな変化はみられない。麻薬犯罪は数的には多くないが,社会におよぼす害毒の点からみれば,重要な犯罪である。戦後のわが国は,世界有数の麻薬犯罪国といわれており,最近も減少の傾向のみられないことは,注意を要する点である。
 次に,犯罪者別にみた外国人犯罪についても,昭和三三年までとほぼ類似の状況を示し,その大部分を占めているのは,朝鮮人の犯罪である。以上のうち,選挙犯罪およびこの年に施行第二年目に入った売春防止法違反については次項に説明を加える。