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 昭和53年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/3 

3 犯行動機の享楽化

 最近の少年非行は,次第にその動機が遊興的・享楽的となり,しかも,この傾向は,犯罪の種類や罪質を問わず,かなり顕著に現れている(後掲IV-30表参照)。以下,二,三の特徴のある傾向を取り上げて,その実態を検討する。

IV-14表 年齢層別刑法犯検挙人員及び人口比(昭和42年〜52年)

(1) 犯行手口の変化
 IV-16表は,窃盗により警察に補導された少年について,昭和41年以降の手口別分布状況を示したものである。
 昭和41年以降,増加傾向の著しい手口は,万引き及び自転車盗,オートバイ盗などの乗物盗であり,急激な減少傾向にあるのは,あき巣ねらい,忍び込み等である。忍び込みなどの悪質な手口が減少し,万引きなどの軽微な手口が増加している事実は,最近における窃盗の多くが遊興的・享楽的な動機に出る比較的軽微な犯行であることを示している。しかし,犯行動機のいかんにかかわらず,このような行為は,非行性の進行につながるおそれも強く,これを一過性の逸脱行為として軽視することはできないであろう。

IV-15表 罪名別・年齢層別刑法犯検挙人員(昭和52年)

(2) シンナー等の濫用
 シンナー等の濫用もまた,遊興的・享楽的な動機に出る逸脱行為の一つと言えるであろう。これは,本来的には,シンナー等の吸引によって意識混濁を伴う酩酊状態を楽しむ行為であるが,濫用により心身の健康を害し,犯罪や死亡事故等にもつながるので軽視できない。
 IV-17表は,シンナー等の濫用によって警察に補導された少年について,昭和43年以降の学職別補導人員等の推移を見たものである。昭和40年代の初めから逐年増加傾向にあった濫用少年は,47年の関係法の一部改正後いったんは急激な減少を示したが,49年以降再び増勢を示し,高水準を維持しながら50年代へと移行している。52年においては3万2,578人で,前年より若干減少しているが,なおその数値は高く,今後の動向には楽観を許さないものがある。

IV-16表 窃盗補導少年の手口別分布(昭和41年,45年,50年〜52年)

 更に,昭和52年の学職別状況を見ると,学生・生徒,有職少年及び無職少年のいずれにおいても前年より減少しているが,中でも高校生及び有職少年についての減少が著しい。しかし,中学生の構成比は逆に上昇しており,この種行為の低年齢化が依然として続いていることを示している。