前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和53年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/4 

4 犯行態様の変化

(1) 犯行の集団性
 犯行態様から見た少年犯罪の一特色として,犯行の集団性が挙げられるが,少年犯罪の共犯状況の推移を見ると,IV-18表のとおりである。例年,共犯による少年の犯行は,業過を除く少年刑法犯総数の3割を上回る高率を占め,成人とは著しく異なる態様を示している。昭和52年においても,共犯のある者は36.1%と成人の3倍強になっており,その傾向を一層強めている。

IV-17表 シンナー等濫用少年の学職別補導人員及び構成比(昭和43年〜52年)

 更に,主要罪名別に見ると,恐喝の47.4%を最高に,暴行,傷害,強盗等がこれに続き,粗暴犯及び凶悪犯が少年の共犯事件として犯されることが多いことを示している。
 なお,警察庁の資料から,昭和52年の交通関係の業過を除く少年刑法犯について,非行集団との関連を見ると,2万5,137人(21.1%)が集団的な背景から非行に陥っている。集団の形態別では,学校仲間を基礎とする集団の成員が1万2,158人(48.4%),また,非行形態別では,窃盗を主とする集団の成員が1万1,716(46.6%)人となっており,前年に引き続き,それぞれ半数近くを占めている。

IV-18表 刑法犯共犯事件の検挙件数(昭和35年,40年,45年,50年〜52年)

(2) 暴走族
 一般に,少年の犯行は,時代的風潮を反映することが多いとされているが,最近の少年非行中,その行為の特異な態様から社会の耳目を集めているものの一つに,いわゆる暴走族がある。
 暴走族は,常識的には,「構成員の各自が自動車等を運転して集団的かつ意図的に交通違反を犯し又は犯すおそれのある集団又は組織」としてとらえられ,本来は遊興的・享楽的な動機に出る集団的な逸脱行為に走る一団と見ることができよう。しかし,最近における暴走族は,単に集団による道路交通関係法規の違反にとどまらず,暴走族間の対立抗争事件や一般市民に危害を及ぼすような暴力事件を引き起こし,粗暴犯集団としての一面をも示している。

IV-19表 暴走族の罪名別検挙件数(昭和50年〜52年)

 IV-19表は,昭和50年以降の暴走族による刑法犯等の罪名別検挙状況を示したものである。52年においては,総数及び各罪名のほとんどについてかなりの増加を見せているが,特に,整備不良車両運転,信号無視,最高速度違反等を中心とする道路交通法違反の増加が著しい。その他の罪名については,刑法犯で,傷害・暴行,道交違反を除く特別法犯で毒物及び劇物取締法違反の各増加が目立っている。最近の暴走族による犯行は,享楽的・刺激的傾向とともに,・善良な一般市民に対しても危害を加えるような悪質な傾向を一段と強めていると言えよう。
 なお,警察庁の資料によると,暴走族として警察がは握しているのは,昭和52年末において365グループ,1万8,231人(前年11月末に比較して,17グループ・4,633人の増加),その人員のうち,少年は56.4%,7,674人(前年より923人の減少)となっている。暴走族の流動的な性格を示すとともに,その構成員が少年層から成人層に移行しつつあることを示すものと言えよう。

IV-20表 一般保護事件終局人員中前処分のある者の比率(昭和35年,40年,45年,50年,51年)