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1 概説 仮釈放は,刑務所,少年院,婦人補導院等の矯正施設に収容されている者を,所定期間の経過後,その社会復帰の見通しの立った時点で仮に釈放し,実社会の生活に移行させることによって,その改善更生・社会復帰の促進を図る措置の総称で,満期ないし満齢釈放と対比される。現行法上は,刑務所からの仮出獄,少年院又は婦人補導院からの仮退院のほか,刑法30条に基づく拘留場又は労役場からの仮出場がある。このうち,仮出獄及び仮退院は,いわば条件付釈放としてパロールの性格を持っている。すなわち,これを許された者は,いずれも保護観察に付され,保護観察期間中,一定の遵守事項を守る義務を負い,遵守事項に違反したり,再犯があった場合には再び矯正施設に収容されることにもなるのである。これに対して,仮出場は,保護観察を伴わず,条件違反によって再収容されることがなく,パロールの要件を欠く点でその性格を異にしている。
総じて仮釈放を許可し,また,仮出獄,婦人補導院からの仮退院を取り消す権限は,刑法28条及び30条1項にいう行政官庁としての地方更生保護委員会(全国に8箇所,高等裁判所の所在地に置かれている。)に属している。仮釈放の決定は,委員3人で構成する合議体において,収容者各人の性格・行状・態度及び能力,施設内での成績,帰住後の環境などを考慮して決定される。 その手続は,通常,矯正施設の長からの申請に基づいて行われるが,仮出場の場合を除き,申請がない場合においても,職権によって審理を開始することができる。なお,地方更生保護委員会の指名を受けた主査委員は,原則として,自ら矯正施設に出向いて本人に面接し,仮釈放の適否,その適期,遵守事項,保護観察実施上の留意事項等について十分検討を行うほか,本人の改善更生・社会復帰のために適切と思われる相談助言をも行っている。 最近5年間の地方更生保護委員会における仮釈放の申請受理及び許否決定の状況は,II-58表のとおりである。 II-58表 仮釈放の種類別受理・決定の状況(昭和46年〜50年) 仮釈放の申請を受理した人員の総数は,昭和50年には2万人台を割り,1万9,263人となり,矯正施設収容者の減少に伴い逐年減少傾向にある。申請受理の総数を事件種別に見ると,仮出獄事件が全体の91.3%を占め,次いで少年院仮退院事件が8.7%で,その他は,仮出場事件の8人にすぎない。50年を前年に比較すると,総数において1,258人(6.1%)減,少年院仮退院事件が176人(9.5%)減となり,その逓減傾向は少年院仮退院事件の場合,特に顕著であると言える。以下,仮釈放の運用について,最も多数を占める仮出獄について述べる。なお,少年院からの仮退院と不定期刑受刑者の仮出獄については,第3編第1章第7節において述べることとする。 |