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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/4 

4 麻薬・覚せい剤関係

 最近10年間における麻薬・覚せい剤関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移は,I-6図及びI-23表のとおりである。

I-6図 麻薬・覚せい剤関係特別法犯検察庁新規受理人員の推移(昭和41年〜50年)

I-23表 麻薬・覚せい剤関係特別法犯検察庁新規受理人員の推移(昭和41年〜50年)

(1) 麻薬関係

 麻薬取締法違反は,沖縄県の本土復帰に伴って,昭和47年及び48年には増加したが,全体としては,著しい減少傾向を維持しており,41年を100とする指数では,50年は29となっている。
 昭和50年における一般司法警察職員による麻薬取締法違反の検挙人員を1150人であるが,警察庁の資料によってその対象麻薬別内訳を見ると,ヘロインが93人(62.0%),LSDが28人(18.7%),医療麻薬が22人(14.7%)などとなっている。また,同じ対象者について違反態様別内訳を見ると,所持が68人(45.3%),譲渡し・譲受けが57人(38.0%),密輸入が15人(10.0%)などとなっている。
 あへん法違反は次第に減少している。しかも,その違反態様の95%以上がけしの不正栽培である。
 大麻取締法違反は,昭和42年ころから増加している。同法違反の検察庁新規受理人員について41年を100とする指数で見ると,46年に466まで増加した後横ばいの状態が続いていたが,50年は580と大幅な増加を示した。
 違反の対象は,乾燥大麻,大麻たばこ,大麻草,大麻樹脂などであるが,新たに液体大麻(ハシッシュ・オイル)も押収されている。これは,少量で大量の乾燥大麻や大麻樹脂に相当する効力を有するものである。
 昭和50年における一般司法警察職員による大麻取締法違反の検挙人員は733人であるが,警察庁の資料によってその違反態様別内訳を見ると,所持が499人(68.1%),譲渡し・譲受けが146人(19.9%),密輸入・密輸出が67人(9.1%)などとなっている。
 マリファナたばこ等の大麻喫煙の風潮は,主として青年層の間に広がりつつあり,今後の動向に注意しなければならない。

(2) 覚せい剤関係

 覚せい剤取締法違反は,昭和45年ころから激増している。同法違反の検察庁新規受理人員について41年を100とする指数で見ると,48年には1,348となり,49年には,かなりの減少を示したものの,50年には再び増加して,1,624という高い数値となっている。過去10年間に16倍になるという急増ぶりである。
 昭和50年における一般司法警察職員による覚せい剤取締法違反の検挙人員は8,218人であるが,警察庁の資料によってその違反態様別内訳を見ると,譲渡し・譲受けが3,548人(43.2%),所持が2,673人(32.5%),使用が1,903人(23.2%)などとなっている。また,密輸入が55人,密造が16人いることにも注目しなければならない。最近では,大量の覚せい剤密輸入事犯が多発しており,従来少なかった国内での密造事犯も多発する傾向にある。
 ところで,戦後我が国の覚せい剤事犯は,昭和29年をピークとする激しい増加現象を示したことは周知のとおりである。同年の検察庁新規受理人員は約5万3,000人を数えた。しかし,その後,覚せい剤取締法の一部改正による罰則の強化,徹底した検挙・処理,中毒者に対する入院措置の導入などの諸対策によって,31年以降は急激に減少した。ところが,最近になって急激に増加しはじめ,覚せい剤の濫用はまたも大きな社会問題となるに至ったのである。そのため,48年には同法の一部改正によって法規制が強化され,また,諸般の施策も講じられているのであるが,現段階では,まだ十分な効果を収めているとは言えない。
 この種事犯は,暴力団の資金源獲得の手段として犯されることが多いが,この点については,第3編第3章第2節において述べる。最近では,覚せい剤濫用の風潮が青少年や家庭の主婦などにまで広がる傾向を見せているので,今後の動向には特に厳重な警戒を要する。