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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節 

第2節 不良青少年グループ犯罪

 近年,青少年の不良グループによる暴力的不法行為が頻発して,大きな社会問題となっている。このような不良青少年グループの概念を明確に定義することは困難であるが,本節では,「共通の目的や興味を基調として結成され,集団的に又は常習的に反社会的行為を行い又は行うおそれのあるおおむね14歳以上20歳未満の青少年の組織又は集団」として理解し,博徒,テキ屋及びぐれん隊等のいわゆる暴力団組織における青少年の構成員,盛り場など一定の地域社会を不法行為の場とするいわゆる地縁的なチンピラ・グループ,学校仲間を不法行為の基盤とする不良学生グループ,あるいは,最近,特に問題となっているいわゆる暴走族などについて考察することとする。
 III-112表は,昭和49年に実施した法務省特別調査(第3編第1章第2節参照)の対象少年8,440人の中から,不良青少年グループの構成員と認められた者765人を選択し,更に,そのうち粗暴犯と凶悪犯を犯した少年256人について,所属集団別人員の割合を示したものである。集団形態について見ると,学校集団が全集団の37.5%を占めて最も多く,盛り場集団・地域集団が34.8%でこれに次ぎ,暴力団員の占める割合は小さい。

III-112表 不良青少年グループ構成員による暴力犯罪の集団別構成比(昭和49年)

 次に,罪名別に集団形態との関係を見ると,学校集団においては,恐喝,傷害,暴力行為等処罰に関する法律違反等の粗暴犯が大多数を占め,その他の罪名の占める比率は小さい。盛り場集団を含む地域集団においては,学校集団と同様に,粗暴犯が高率を占めるが,強盗,強姦など凶悪犯罪の数値も大きく,学校集団に比べてより悪質な犯行形態をとる集団となっている。暴力団の構成員と認められた少年による暴力犯罪は,その実数が少ないが,傷害,恐喝などの粗暴犯に加えて,他の集団には見られない殺人等の発生も見られ,その集団の暴力的性格を示唆している。
 なお,警察庁の調査によると,昭和48年に検挙された暴力団所属団体別少年刑法犯は,総数1,595人で,その内訳は,博徒422人,テキ屋327人,青少年不良集団322人,その他524人となっている。
 次に,最近,不良青少年グループの一つとして大きな社会問題となっているいわゆる暴走族について検討する。
 一般に,暴走族は,昭和38年ころに出現したいわゆるカミナリ族を原型とし,47年ころにはいわゆるサーキット族も現れたが,その不法行為の質的・量的変化につれて,最近のように,呼び名もまた変わってきたものとされている。
 暴走族を正確に定義することは困難であるが,常識的には,「構成員の各自が自動車等を運転して集団的かつ意図的に交通違反を犯し,又は犯すおそれのある集団又は組織」といえるであろう。しかし,最近における暴走族は,単に,集団による速度違反,信号無視,ジグザグ走行,急転回,整備不良車運転など道路交通関係法規の違反にとどまらず,自動車に関連する犯罪,あるいは自動車を手段とする犯罪を敢行する傾向が顕著となっている。昭和49年において,全国各地で暴走族の組織化や系列化が急激に進行するに伴い,暴走族相互間の対立抗争が激化し,暴力行為等処罰に関する法律や兇器準備集合罪を適用する事例も少なからず発生している。また,車両で通行中の一般人等に対する集団暴行のほか,強盗,強姦など暴走族による一般刑法犯も多発し,その非行集団化は著しいものがある。
 III-113表は,警察庁が把握している昭和49年12月現在における暴走族の地域別構成員の状況を示したものである。暴走族の集団数としては,東京を除く関東地方が最も多く,集団の構成員数は東京が最も多い。このことから,暴走族の大多数が東京を中心とする関東地方に集中していることがわかる。また,東京においては,1グループの平均構成員数が他に比べて著しく多くなっており,暴走族の多衆集団化傾向を指摘することができる。

III-113表 暴走族の地域別構成員状況(昭和49年12月11日現在)

 暴走族の離合集散は著しく,その集団は極めて流動的なものとされている。警察では暴走族に対する指導や取締りを強化しており,解体された集団もかなり多い。その数を現存集団数と対比すると,この種集団の激しい消長ぶりがうかがわれる。
 なお,暴走族の少年・成人別構成状況を見ると,少年の占める割合が大きく,特に東京において顕著である。
 次に,暴走族による刑法犯の罪名別検挙状況を地域別に示したのが,III-114表である。暴走族による犯罪としては,暴力行為等処罰に関する法律違反が最も多く,以下,窃盗,傷害,強姦,恐喝及び暴行の順となっているが,粗暴犯の占める比率が極めて高い。

III-114表 暴走族の地域別・罪名別検挙状況(昭和49年12月11日現在)

 地域別に見ると,東京及び関東において粗暴犯が多いほか,中部及び中国における粗暴犯と近畿における強姦の数が目立っている。
 このように,これらの暴走族による犯罪の大部分が少年によって犯され,しかも,多衆集団化の傾向を強めていることは重大であり,今後の動向を注視しなければならない。