第2節 少年犯罪の特質と背景 本節においては,警察庁の統計,司法統計年報等の各種統計資料のほか,法務総合研究所が法務省刑事局と共同して実施している「犯罪少年の実態に関する調査」(以下,「法務省特別調査」という。)の結果等を適宜引用しつつ,少年犯罪の特質と背景について述べることとする。 法務省特別調査は,昭和49年1月から12月までの間に,全国の地方検察庁及び同支部において受理した少年事件(道路交通法違反事件,業務上(重)過失致死傷事件及び簡易送致,追送致,他庁からの移送,再起等の事件を除く。)の中から無作為に十分の一を抽出した8,440人の少年を対象として行ったものである。なお,49年以前についても,42年以降同様の調査が継続して実施されているので,以下の検討に際しては,必要に応じ,過年度の資料を引用して比較を試みることとする。 以下,これらの資料等から見られる昭和49年の少年犯罪の主要な特質等について摘記する。 [1] 普通一般の家庭出身の犯罪少年が引き続き増加し,従来,少年犯罪の要因として重視されてきた親の欠損や家庭の生活程度の貧困などに関する指摘は,希薄なものとなっている。 [2] 享楽的な風潮を助長する風俗営業や有害図書等が引き続き増加し,少年を取り巻く社会環境は,依然として悪化しつつある。 [3] 少年人口中に占める学生・生徒の割合の増加に伴い,学生・生徒による犯罪は増加している。高校生及び中学生においてこの傾向は著しく,特に,これらの者による粗暴犯が増加している。 [4] 勤労少年による犯罪は,引き続き減少し,少年刑法犯検挙人員中に占める割合は約2割にすぎない。職種別に見ると,工員及び店員が大多数を占め,農林・漁業等が少なくなっている。 [5] 少年犯罪の集団化傾向は,依然として増大しており,特に,年少少年層においてその傾向が著しい。罪種的には,凶悪犯及び粗暴犯が共同して犯される率が概して高い。 [6] 少年犯罪は,少年の居住地域内で発生することが多く,犯罪行動圏の広がりはさほど大きくない。居住地との関連率の高い罪名は,暴行,傷害,窃盗及び強姦などである。
|