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 昭和50年版 犯罪白書 第2編/第5章/第3節/1 

1 仮出獄者の特徴

 受刑者の仮出獄は,行政官庁による二つの選択段階,すなわち,刑務所で仮出獄の申請の当否を決めるとき,及び刑務所から仮出獄の申請がなされた者について地方更生保護委員会が仮出獄の許否を決めるときの両段階を経て初めて認められる。したがって,仮出獄者の特質は,受刑者の特質に基礎を置きながらも,そこには若干の相違が見られる。
 仮出獄者の新受人員は,前章で述べたように,近年,刑務所人口の激減に伴い減少の一途をたどっている。
 この新受人員について年齢層別構成比の推移を見ると,22歳以下の年齢層は,昭和44年に12.2%であったのが,49年では6.4%と低減し,40歳以上のそれは,17.7%から21.6%へと増大している。他の中間の年齢層では,いずれも多少の起伏はあるが,横ばいの状態にある(II-18図)。この若年層の低減と高年層の増大の傾向は,罪名によって若干度合いが異なるが,ほとんどの罪名にわたって見うけられる。

II-18図 新受仮出獄者の年齢層別構成比の推移(昭和41年〜49年)

 新受仮出獄者の罪名別構成比の推移については,同じく前章第3節で概略触れたが,更に過去約10年間に罪名別構成比が著しく変動しているものを取り上げて検討する。急速な伸びを示しているのは交通犯罪で,業務上(重)過失致死傷は,昭和47年まで急激な上昇傾向を見せたが,48年以降下降に転じており,道路交通法違反は,46年以降著しく上昇し,49年にはやや伸びが落ちている。覚せい剤取締法違反は,48年以降の上昇が目立っている。強姦罪は,ここ数年起伏のある横ばい状態が続いているが,41年に比べ若干上昇している。他方,構成比が低下しているのは窃盗,詐欺,恐喝,横領等の財産犯で,中でも窃盗の下降が著しい(II-19図)。

II-19図 新受仮出獄者の主要罪名別構成比の推移(昭和41年〜49年)

 次に,新受仮出獄者の累犯率の推移を見ると,昭和45年を例外として,その率は41年以降下降を続け,7年間に8.6%の低下を見ており,49年にはやや上昇して30.6%を占めている(II-111表)。累犯率を主要罪名別に見ると,窃盗,暴力行為等処罰に関する法律違反,覚せい剤取締法違反,恐喝,詐欺,傷害・暴行等が比較的高い率を示しており,業務上(重)過失致死傷,道路交通法違反等の累犯率は低い(II-20図)。

II-111表 新受仮出獄者の初犯・累犯別人員の推移(昭和41年〜49年)

II-20図 仮出獄許可決定者の罪名別初犯・累犯別人員(昭和49年)

 交通犯罪とこれを除く一般犯罪とに分けて累犯率の推移を見ると,交通犯罪は,一般犯罪に比べ累犯率は非常に低いが,その率は徐々に上昇の傾向にあり,他方,一般犯罪は,年によって高低が見られ,昭和43年まで下降し,以後上昇をたどって45年にピーク(42.3%)となり,その後48年まで下降し,49年にはやや上昇している。全体として,一般犯罪の累犯率は4割を前後している(II-21図)。

II-21図 仮出獄許可決定者の交通犯罪・一般犯罪別累犯率の推移(昭和41年〜49年)

 これら累犯者の犯罪傾向の進度を把握する方法の一つとして,昭和49年中に仮出獄許可決定のあった1万5,756人について,刑務所入所度数を先に示したII-78表で見ると,初度64.0%,2度13.6%,3度7.3%,4度4.5%,5度以上10.5%となっていて,入所度数が多く犯罪傾向が進んでいると思われる群の存在がうかがわれる。
 このような犯罪傾向の進んだ者に対する改善・更生の措置は,極めて重要な課題であって,保護観察の実務においてもあらゆる努力が払われてはいるが,保護観察期間の制約もあって,十分な更生の手段を講ずる機会のないまま保護観察を終了しなければならない場合も多い。