前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和50年版 犯罪白書 第2編/第5章/第3節/2 

2 保護観察付執行猶予者の特徴

 保護観察付執行猶予者の新受人員は,既に述べたように,昭和41年以降46年までやや減少傾向にあったが,以後横ばいの状態で,49年は7,014人である。
 この新受人員について年齢別構成比の推移を見ると,昭和41年以降44年まで,22歳以下の年齢層は,上昇して最高41.9%に達し,他の年齢層はすべて緩やかな下降傾向を示していたが,45年からはこれが逆転し,22歳以下の年齢層の比率が著しく低減して49年には23.8%となり,反対に30歳以上の年齢層が増大している。23歳以上29歳以下の年齢層は,44年まで低下していたが,以後反転して48年まで上昇をたどり,49年には若干低下している(II-22図)。この若年層の構成比が低減する傾向は,ほとんどの罪名について見うけられる。

II-22図 新受保護観察付執行猶予者の年齢層別構成比の推移(昭和41年〜49年)

 新受保護観察付執行猶予者の罪名別構成比について,近年,顕著な傾向を示す罪名を取り上げ検討する。継続して上昇しているのは交通犯罪で,49年では総数中約2割を占めるに至っている。このうち,業務上(重)過失致死傷は,45年まで急激に上昇していたが,以後横ばいないしやや上昇の傾向にあり,道路交通法違反は,47年までは緩やかな上昇であったが,48年から急激に伸びている。覚せい剤取締法違反は,46年まで緩やかな上昇であったが,47年,48年に著しい上昇を示し,49年にはやや下降している。他方,構成比が低下しているのは,窃盗,恐喝,詐欺,横領等の財産犯及び売春防止法違反である。窃盗は,49年に上向きに転じているが,他の罪名は,いずれも漸次下降している(II-23図)。

II-23図 新受保護観察付執行猶予者の主要罪名別構成比の推移(昭和41年〜49年)

 次に,保護観察付執行猶予終了者の前歴を見てみよう。起訴猶予をも含め過去に何らかの刑事処分歴を有する者は,昭和41年では58.8%を占めていたが,以後この比率は逐年増大し,49年では64.2%に達している。また,保護処分歴のある者は,41年に24.6%であったが,49年には27.4%と増大している(II-112表)。

II-112表 保護観察付執行猶予終了者の刑事処分歴及び保護処分歴の推移(昭和41年,45年,49年)

 保護観察付執行猶予者が保護観察期間中執行猶予を取り消された率の推移を見ると,取消率は逐年下降傾向にあり(II-113表),前歴のある者の占める率が逐年上昇しているのにかかわらず,取消率は下降している。しかし,保護観察付執行猶予者の取消率は,保護観察開始後第4年目までの間に2割を超えており,また,昭和49年中に保護観察を終了した者の終了時における成績を見ると,成績が不良と評定された者,再犯で身柄拘束中の者,執行猶予の取消しを受けた者等を含むいわゆる不良群は,終了者総数中26.4%を占めている。

II-113表 執行猶予を取り消された者の推移(昭和35年〜49年)

 以上,仮出獄者及び保護観察付執行猶予者について最近の特質を考察したが,前者については,高年齢化の傾向や一般刑法犯については比較的高い累犯率が維持されており,後者については,若年層対象者の減少傾向や前歴のある者の比率が増大しており,また,両者を通じて,交通犯罪による対象者の占める比率が増大していることが目立っている。
 なお,各保護観察所では,これらの交通犯罪による対象者に対し必要に応じた個別処遇を行うほか,中には集団処遇など刷新的方法を採用し処遇効果を上げる努力がなされている。しかし,それはまだ試行の段階を脱しておらず,この種犯罪者に対する有効な処遇方法を樹立することが,今後の重要な課題となっている。