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 昭和47年版 犯罪白書 第二編/第三章/一/2 

2 仮出獄

 仮出獄の申請および許否決定の状況は,先のII-70表に示したとおりで,昭和四六年の申請受理人員は二〇,六九六人と,前年に比べて三〇六人の減少となっている。しかし棄却数は六一人増加し,前年まで逐年減少を続けて九・一%に下がっていた棄却率は,九・六%に上昇した。他方許可数は,前年より四〇四人少ない一七,六五七人となった。
 昭和四六年の仮出獄許否決定の状況を,刑法上の累犯・非累犯別,刑務所への入所度数別ならびに許否決定時の年齢別にみたのがII-71表である。これによると,累犯は非累犯よりも棄却率が高く,また入所度数の多い者ほど棄却率が高くなっている。年齢については,六〇歳以上の高齢者は別として,一般に年齢が高いほど棄却の率が高い。

II-71表 受刑者の累犯・非累犯の別,入所度数別および年齢別の仮出獄許否の状況(昭和46年)

 ところで受刑者は,刑期のうちどの程度の割合を服役してから仮釈放になっているであろうか。昭和四六年に仮出獄を許された定期刑の受刑者を,刑の長さによって六段階に区分し,それぞれの執行率(執行すべき刑期に対する執行ずみの刑期の割合)を示したものがII-72表である。まず定期刑仮出獄者全体では,半数以上(五二・八%)の者が執行率九〇%以上である。執行率八〇%以上の者全部をとると,定期刑仮出獄者のほとんど(八二・七%)ということになる。法律上は,定期刑については刑期の三分の一を経過すれば仮出獄を許可することが可能になっているが,実際には,執行すべき刑期の二分の一未満で仮出獄が許されることは皆無に近い。

II-72表 定期刑仮出獄者の刑の執行状況(昭和46年)

 次に執行率を刑期の段階別にみると,執行率九〇%以上の者は,刑期一年以下の場合に六三・三%,二年以下は四九・五%,三年以下は四五・〇%,五年以下は四一・〇%と,刑期が長くなるにしたがって減少している。逆に,執行率八〇%未満の者の割合は,刑期が長くなるほど多くなっている。また,累犯・非累犯の別に調べたところでは,累犯は,前述のように棄却率が高いばかりでなく,許可の場合でも執行率九〇%以上という短期間の仮出獄を許される者の率が七七・八%と,非累犯の場合の三九・九%に比べて著しく高い。
 なお,昭和四四年から四六年まで三年間に無期刑で仮出獄を許された者の在監期間は,II-73表のとおりで,四六年においては一三年をこえ一六年以内の者が多い。次に仮出獄者全体について,仮出獄期間(執行すべき刑期から執行ずみの期間を除いた残刑期間で,この間,保護観察に付される。)の長さをみると,後掲一九二ページのII-78表に示すとおりで,昭和四六年の仮出獄者では,三月以内の者が六九・八%に達しており,三月をこえ一年以内の者は二四・七%で,一年をこえる者は五・五%にすぎない。

II-73表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和44〜46年)

 仮出獄期間中の犯罪または遵守事項違反に対しては,仮出獄を取り消すことができることとなっている。最近五年間における仮出獄取消の状況は,II-74表に示すとおりで,取消率(ここで取消率というのは,ある年次に仮出獄の取消を受けた人員を,同じ年次の仮出獄許可人員で除した値であるから,正確な意味での取消率とはいえないが,大体の傾向を知ることができる。)は,三・八%ないし四・八%である。

II-74表 仮出獄取消決定を受けた人員(昭和42〜46年)

 ところで,仮出獄者と満期釈放者の刑務所再入所状況を比較すると,II-75表[1]が示すとおりになる。同表は,昭和四二年から四六年までに出所した仮出獄者と満期釈放者の人員と,そのうち,仮出獄取消または再犯によって,再収容された人員を,再収容の年別に示している。昭和四六年については出所の当年の再収容までしか追跡できないが,四二年の出所者については,第五年目まで追跡がなされている。釈放後の年数別に平均して再収容率をみると,II-75表[2]のとおりである。これによると,満期釈放者は,出所の当年に,出所人員の一〇・九%が再収容されているが,仮出獄者にあっては四・〇%にとどまっており,また,第五年まで,各年の比率をそのまま累計すると,仮出獄者では二八・八%が再収容され,満期釈放者では四八・八%が再収容されていることになる。

II-75表 仮出獄者と満期釈放者の成行き(昭和42〜46年)