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 昭和47年版 犯罪白書 第一編/第二章/一一/1 

1 アメリカ

 アメリカにおける一九六〇年から一九七〇年までの指標犯罪の発生件数の推移および構成をみたのが,I-81表である。アメリカでは,連邦および各州の法制が異なり,犯罪類型も統一されていないこともあって,国内における犯罪の傾向および分布を測定する指標として,殺人,強姦,強盗,加重暴行傷害,不法侵入,五〇ドル以上の窃盗および自動車盗の七犯罪が使用されている。これらの犯罪は,指標犯罪(Crime Index Offenses)と呼ばれ,比較的精密な全国的集計が行なわれているので,指標犯罪について,その動向をみることにする。

I-81表 指標犯罪発生件数(アメリカ)(1960,1962,1964,1966,1968,1970年)

 この表によると,指標犯罪の総数および罪名別件数は,すべて著しく増加しており,一九六〇年の件数を一〇〇とする指数で示すと,一九七〇年において,最も増加の著しい犯罪は,強盗であり,一九七〇年の指数は三九二となっている。次いで,五〇ドル以上の窃盗の三六八,自動車盗の二八七,不法侵入の二六四,加重暴行傷害の二五三,強姦の二四〇,殺人の一七三の順である。なお,指標犯罪以外の犯罪で特に増加の顕著な麻薬犯罪は,一九七〇年の逮捕者が一九六〇年の約七・四倍となっているのが注目される。
 ところで,後出のI-86表は,わが国における一九六〇年から一九七〇年までの刑法犯につき,主要罪名別に,その発生件数の推移をみたものであるが,これによると,わが国における刑法犯は,一九六〇年と比べ,一九七〇年において,業務上過失致死傷が激増し,窃盗がほぼ横ばいの状況にとどまっているのを除けば,他の犯罪は,いずれも一九六〇年の件数の約四割ないし九割に減少しており,以上のアメリカの犯罪動向と比較して,きわめて対照的である。
 次に,I-81表にもどって,一九七〇年における指標犯罪の罪名別構成をみると,不法侵入が総数の三九・〇%で最も多く,五〇ドル以上の窃盗の三一・四%,自動車盗の一六・五%,強盗の六・三%,加重暴行傷害の五・九%,強姦の〇・七%,殺人の〇・三%と続いている。五〇ドル以上の窃盗と自動車盗を合わせると,窃盗が総数の約四八%となり,指標犯罪の約半数を占めている。なお,わが国においても,刑法犯のうちで,窃盗が最も多数を占めていることは,I-86表に示しているとおりである。
 次に,アメリカにおける一九六三年から一九七〇年までの指標犯罪による逮捕者の年齢層別人員指数の推移をみたのがI-3図である。アメリカにおける成人,青年および少年の区分は,連邦および各州によって異なるが,とりあえず,逮捕者の年齢層につぎ,二一歳以上を成人,一八歳以上二一歳未満を青年,一八歳未満を少年と区分して,それぞれ逮捕者数の推移をみることにする。同図により,一九六三年の逮捕者数を一〇〇とする指数で示すと,すべての年齢層別逮捕者数は,逐年増加しているが,一九七〇年において,最も増加しているのは,青年層で二一九となっており,次いで,少年層の一八三,成人層の一七一となっている。

I-3図 指標犯罪による年齢層別逮捕者人員指数(アメリカ)(1963〜1970年)

 また,一九七〇年において,指標犯罪総数の約二九%は,一八歳未満の者によって行なわれ,麻薬法違反による逮捕者の約五三%は,二一歳未満の青少年で占められている(連邦検察局統一犯罪報告書)。