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2 イギリス イギリスにおける一九六〇年から一九六八年までの要正式起訴犯罪の発生件数の推移を,主要罪名別に示すと,I-82表のとおりである。イギリスでは,一九六九年一月一日施行の窃盗処罰法(Theft Act)により,財産犯等の犯罪類型が改められるなどしたため,財産犯等について,その前後の統計を比較することができないので,一九六八年までの発生件数の推移をみることにする。要正式起訴犯罪(Indictable Offences)とは,原則として,正式起訴状により起訴され,審理,裁判すべき犯罪をいい,ほぼわが国の刑法犯にあたるものである。同表によると,正式起訴を要する各犯罪は,いずれも,増加の傾向を示している。すなわち,一九六八年における罪名別発生件数を,一九六〇年のそれを一〇〇とする指数で示すと,最も増加率の高いものは,強盗で二三九となっており,次いで,賍物の二二九,偽造の二二五,放火の二〇九,その他の暴力犯罪の二〇四,不法侵入の一九〇の順となっている。そのほか,強姦の指数は一六一,殺人が一四八と増加している。
I-82表 要正式起訴犯罪発生件数(1)(イギリス)(イングランドとウェールズ)(1960,1962,1964,1966,1968年) このように,I-86表に示すとおりの,わが国における業務上過失致死傷と窃盗を除く他の刑法犯の減少傾向に対して,イギリスにおける要正式起訴犯罪はすべて増加しており,とくに,放火,強盗,強姦および殺人などの凶悪犯罪が相当の増加を示していることが注目される。次に,イギリスにおける一九六九年および一九七〇年の要正式起訴犯罪の罪名別発生件数および構成比をみたのが,I-83表である。一九七〇年における構成の割合をみると窃盗が総数の五八・八%で最も多く,その他の罪名では,不法侵入の二七・七%,詐欺の四・八%,その他の暴力犯罪の二・六%,賍物の二・四%と続いている。これにより,窃盗,詐欺および賍物を合わせた財産犯が,総数の約三分の二を占めていることがわかる。わが国においても,窃盗が総数の五三・八%の多数を占め,ほぼ同様の構成比を示している。 I-83表 要正式起訴犯罪発生件数(2)(イギリス)(イングランドとウェールズ)(1969,1970年) 次に,一九六〇年から一九七〇年までの間にイギリスの全裁判所(治安判事裁判所,巡回・四季裁判所)において要正式起訴犯罪により有罪裁判を受けた者の年齢層別人員指数の推移をみたのが,I-4図である。イギリスの法制によると,少年は,一四歳以上一七歳未満の者であり,一七歳以上二一歳未満のいわゆる青年層は,処分等の点で,二一歳以上の成人と異なった取扱いがなされている。また,児童は,一四歳未満の者であり,そのうち八歳未満の者は,いかなる刑事上の責任をも問われないとされていたが,一九六四年から,刑事責任年齢が一〇歳に引き上げられている。同図によると,各年齢層の有罪者数は,いずれも,増加の傾向にあるが,一九六〇年の各年齢層別の有罪者数を一〇〇とする指数で示すと,一九七〇年において,最も増加しているのは,青年層で二七七となっており,そのほか,成人層の二一九,少年層の一八四,児童層の八〇の順となっている。アメリカの場合と同様,青年層による犯罪が著しく増加していることが目だっている。I-4図 要正式起訴犯罪により有罪裁判を受けた者の年齢層別人員指数(イギリス)(イングランドとウェールズ)(1960〜1970年) |