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 昭和47年版 犯罪白書 第一編/第二章/一一/4 

4 フランス

 一九六〇年から一九六八年までに,フランスの重罪法院,軽罪裁判所および控訴院において有罪判決を受け,これが確定した者の推移ならびに構成比を,主要罪名別に示したのがI-85表である。重罪法院および軽罪裁判所において審理・裁判される犯罪は,原則として,それぞれ重罪と軽罪であり,これら犯罪の大部分は,ほぼ,わが国の刑法犯に相当する。この表にみるように,一九六八年の有罪判決確定者の総数およびその主要罪名別人員は,一九六〇年に比較して,すべて増加を示している。一九六〇年を一〇〇とする指数によって,これら罪名別の増加率をみると,一九六八年において,小切手犯が三三六と最も大きい増加率を示し,以下,加重盗の二一三,過失致死傷の一九五,窃盗の一六二,傷害致死・加重傷害の一六一,強姦の一二七,殺人の一二四,傷害の一二四,公然わいせつの一二〇という順になっている。なお,小切手犯の大部分は,小切手の不渡り(銀行口座に引当資金がなく,不渡りとなる場合)などによるものであり,加重盗には,強盗のほか,犯情の重い窃盗も含まれている。

I-85表 罪名別有罪判決確定者数(フランス)(1960,962,1964,1966,1968年)

 統計の基礎が異なるため,適正な比較とはいえないが,こころみに,以上の推移を,I-86表により,わが国の刑法犯発生件数の動向と対比させ,殺人,傷害致死・加重傷害,傷害,過失致死傷,強姦および窃盗の各罪名につき,同一期間(一九六〇年以降一九六八年まで)における,その増減状況をみると,フランスにおいては,上記罪名のすべてが二四%から九五%にわたる増加を示しているのに対し,わが国においては,業務上過失致死傷が三三六%もの大幅な増加を示しているのみで,その他の罪名はいずれも三%から一七%にわたる減少を示している。

I-86表 刑法犯発生件数(日本)(1960,1962,1964,1966,1968,1970年)

 次に,一九六八年における有罪判決確定者について,その主要罪名別構成比をみると,過失致死傷の二二・一%が最も大きく,以下,窃盗の二〇・九%,小切手犯の一一・九%,傷害の八・四%,公然わいせつの一・六%,殺人,強姦および加重盗の各〇・一%の順になっている。「その他」は,三四・八%を占めているが,このうちには,詐欺,横領,背任などのほか,わが国の特別法犯に相当する罪名も含まれている。他の罪名に比較して,過失致死傷と窃盗の占める割合がきわたって大きい点は,わが国と同様であるが,小切手犯の占める比重が大きいのは,わが国と法制の異なるためである。
 犯罪者の年齢層別動向をみるため,前述の有罪判決確定者(一八歳以上の者)ならびに再教育処分(わが国の保護処分に相当する。),または刑事処分を受けた少年(一七歳以下の者)につき,一九六〇年から一九六八年までの推移を,一九六〇年を一〇〇とする指数によって,年齢層別に示したのが,I-6図である。この図によって,一九六八年における指数を年齢層別にみると,とりわけ,増加が著しいのは,一八歳から二〇歳の青年層の一八〇であり,これに次ぐのが一三歳から一七歳の少年層の一七一で,二一歳以上と一三歳未満(わが国の触法少年に相当する年齢)はやや増加率が低く,それぞれ一三四と一一三を示している。

I-6図 年齢層別有罪判決を受けた成人および処分を受けた未成年者の人員指数(フランス)(1960-1968年)