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 昭和46年版 犯罪白書 第三編/第二章/三/1 

三 少年の交通犯罪

1 概説

 昭和四五年において,交通事故関係の業務上(重)過失致死傷により,警察に検挙された少年は,七六,九二一人で,少年刑法犯の検挙人員中,四〇・三%を占め,道路交通法違反により送致された少年は,四九〇,一三二人で,これが,少年特別法犯の送致人員中に占める割合は,九七・四%となっている。このように,少年の犯した犯罪のうち,交通犯罪の占める割合は,非常に高く,少年の交通犯罪の防止もまた,きわめて重要な課題である。
 ところで,成人も含めた全体としての交通犯罪のうち,少年によって犯された事件の占める割合はどうなっているのであろうか。
 昭和四五年におけるわが国の有責人口(刑事責任能力のある一四歳以上の人口)は,同年一〇月に行なわれた国勢調査によれば,八,〇六七万六千人で,そのうち,少年は,一,〇七八万七千人であるから,有責人口の一三・四%に当たることとなる。これに対して,交通事故,交通違反に占める少年の比率をみると,III-127表およびIII-128表のとおりで,まず,III-127表は,最近二年間に,検察庁で新規に受理された業務上または重過失致死傷の人員のうち,少年の割合をみたものであるが,業務上過失致死傷については,少年の占める割合が一一・八%または一二・〇%,重過失致死傷では,三八・五%または四〇・六%となっている。次に,III-128表は,道路交通法に違反するものとして,警察から,検察庁および家庭裁判所に送致され,あるいは,昭和四三年以降,交通反則通告制度の適用を受けて,警察官等から告知された者について,最近五年間の総数と少年の占める割合をみたものであるが,昭和四五年は,少年の犯した道路交通法違反が六七五,八四九件で,全体の一二・七%を占めている。

III-127表 少年の業務上(重)過失致死傷検察庁新規受理人員(昭和44,45年)

III-128表 道路交通法違反少年事件累年比較(昭和41〜45年)

 このような数字をみると,少年は,人口の割合には,業務上過失致死傷や道路交通法違反を犯す率が低いように思われるが,自動車の運転免許には,年齢の制限があり,大型免許は原則として二〇歳,普通免許等は一八歳,二輪免許,原付免許等は一六歳に,それぞれ達しなければ与えられないこととなっているうえ,社会的にも,経済的にも,少年が自動車を運転する機会は,成人に比べてあまり多くないことを考慮すると,低率であるとはいえない。一方,重過失致死傷のうち,ほぼ四割におよぶ高い率が少年によって占められており,無免許運転の際に事故を起こしたものの占める割合が,非常に多くなっている。また,昭和四五年における少年の道路交通法違反を態様別にみると,III-8図[1]のとおりであり,これを成人事件についてみた同図[2]と比較すると,その態様にかなりの相違があることが明らかである。成人事件では,無免許運転が三・九%であるのに対し,少年の場合には,この割合が二二・八%にも及び,少年の無免許運転の実数は,一五四,三五四件となっている。このように,無免許運転や,無免許運転による人身事故の占める割合の多いことが,少年の交通犯罪の特徴となっている。

III-8図 少年および成人の道路交通法違反の態様別百分比(昭和45年)

 交通犯罪を犯した少年が,家庭裁判所においてどのような終局決定を受けているかを,最近五年間の業務上(重)過失致死傷と道交違反(自動車の保管場所の確保等に関する法律違反を含む。)についてみたのが,III-129表および130表である。これによると,昭和四四年における検察官への逆送率は,業務上(重)過失致死傷で二九・八%(前年比五・七%減),道交違反で九・三%(前年比四・〇%減)と大幅に低下するとともに,審判不開始または不処分に終ったものの割合が増加し,業務上(重)過失致死傷では六割をこえ,道交違反では九割近くにまで達している。

III-129表 業務上(重)過失致死傷の家庭裁判所終局決定人員と比率(昭和40〜44年)

III-130表 道路交通事件の家庭裁判所終局決定人員と比率(昭和40〜44年)