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 昭和46年版 犯罪白書 第三編/第二章/一/2 

2 交通事故事件の最近の傾向

 最近三年間における,一日当たりの死傷者数を,月別に図示すると,III-6図のとおりである。これによると,各年とも,年の前半に比べて後半に死傷者数が多く,そのピークは,盛夏の八月であって,その前後の七月,九月を含む夏季と,一一月ないし一二月の年末にかけて,死傷事故の多発がみられる。また,同図によって,昭和四三年から四五年に至る月別死傷者数の増減の状況をみると,昭和四四年から四五年に至る死傷者数の増加に比べ,昭和四三年から四四年に至る死傷者数の増加が著しいのが目につく。

III-6図 月別1日平均死傷者数(昭和43〜45年)

 右の死傷者数のうち,昭和四五年における,一日当たりの死亡者数と負傷者数を,月別にみたのが,III-105表である。これによると,一日当たりの死亡者数では,一一月が五〇・五人と最も多く,一二月,八月がこれに続き,年の後半に属する七月から一二月までは,各月とも,年平均の一日当たり四五・九人を上回る数字を示している。一日当たりの負傷者数では,八月の三,二一〇・四人が最も多く,一月の二,一六八・三人が最も少ないが,この両月を比較すると,一日当たり千人以上の差がみられる。

III-105表 月別死傷者数(昭和45年)

 次に,III-106表は,人身事故事件について,事故の主たる原因となった自動車の種別ごとに,それぞれ事故発生件数をみたものである。これによると,昭和四五年は,自家用自動車の事故が総数の七四・六%,事業用自動車の事故が一二・九%,二輪車の事故が一二・五%となっているが,最も多いのは,自家用普通乗用自動車による事故で,前年まで首位を占めていた自家用普通貨物自動車による事故をしのいだことが注目される。前年より増加したのは,自家用では,マイクロバス,普通乗用,軽四輪乗用,特殊大型,同小型の各自動車による事故であり,事業用では,バス,マイクロバスの二車種,二輪車では,自動二輪,軽二輪の二車種によるものであるが,増加件数の大きな部分を占めるのは,自家用乗用車であるから,自家用乗用車の普及と自動車運転免許取得人口の増加とがあいまって,いわゆるオーナードライバーによる交通事故は,今後ますます増加の傾向をたどるものと思われる。また,III-106表によって,自動車一万台当たりの事故件数をみると,一般に,自家用に比して,事業用の事故率がはるかに高く,ことに,ハイヤー,タクシーの属する事業用普通乗用自動車のそれが著しく高くなっている。さらに,全体として,事故率の減少傾向がみられる中で,事業用のバスとマイクロバスおよび自動二輪車,軽二輪車の事故率がそれぞれ上昇していることに気がつく。

III-106表 事故の主たる原因となった車種別人身事故件数(昭和44,45年)

 次のIII-107表は,自動車による人身事故を,事故の類型別に分類して,最近四年間の状況をみたものである。これによると,人対車両,車両相互および車両単独のいずれの類型の事故についても,実数は増加の傾向にあるといえようが,ただ,人対車両および車両相互の類型の事故は,昭和四五年に前年より若干低滞している。総数に対する構成比をみると,昭和四五年は,車両相互の事故が六八・六%,人対車両の事故が二三・八%,車両単独が七・三%,その他が〇・二%で,車両相互の事故は,昭和四二年以降,逐年増加し,人対車両の事故は,逆に逐年減少している。このように,事故類型別にみると,今後の傾向としては,歩行者が被害者になる場合よりも,自動車間の衝突等の事故によって,運転者または同乗者が被害者となる場合の方が増加することとなろう。なお,警察庁交通局の統計によると,車両相互の事故のうち,最も多いのは追突事故であり,次いで,出会いがしらの衝突事故,右折時の側面衝突事故の順となっているが,人対車両の事故では,横断歩行中の事故が最も多く,次いで路上への飛び出しによる事故となっている。

III-107表 事故類型別発生状況(昭和42〜45年)

 III-108表は,交通事故による死亡者と負傷者について,全国総数に占める七大都市所在の都府県内における数の比率を示したものである。これによると,死亡者と負傷者のいずれについても,おおむね,大都市の占める比率が減少して,交通事故事件の地方化ないし全国化の傾向がみられ,死亡者の比率は,昭和四一年の三二・二%から昭和四五年の二九・七%に,負傷者の比率は,昭和四一年の四七・五%から昭和四五年の四〇・八%に減少している。なお,昭和四一年から四五年にかけて,最も増加率の大きかった地域は,死亡者については,茨城県(六五・七%増)で,千葉県(六四・八%増)がこれに次ぎ,負傷者については,青森県(二三九・一%増),石川県(二二五・五%増),徳島県(二〇八・九%増),栃木県(一九九・九%増)の順となっている。

III-108表 全国および7大都府県の死傷者数(昭和41〜45年)