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2 少年の保護観察 保護観察一般については,すでに,第二編第三章において述べたので,ここでは,保護観察処分少年および少年院仮退院者の保護観察について,若干の事項を付加するにとどめる。
(一) 保護観察処分少年 昭和四五年中に新たに受理した保護観察処分少年の総数は二七,三八三人で,前年に比べ,一,三八四人の増加となっている。同年末現在の保護観察処分少年は五三,四一七人で,保護観察対象者総数の六〇・六%を占めている。
保護観察処分少年の新受人員について,最近五年間の年齢層別の推移をみたのが,III-99表である。これによると,総数では,昭和四四年まで,逐年減少の傾向にあったものが,昭和四五年には増加を示している。これを年齢層別にみると,最近五年間では,年少少年および中間少年は,逐年減少していたが,昭和四五年にはいずれも増加し,年長少年は,昭和四三年まで逐年増加していたのが同四四年に一時減少をみせたものの,同四五年には再び増加に転じている。各年齢層別人員の総数に占める割合をみると,年長少年が,つねに過半数を占めており,昭和四五年においては,六三・二%と最も多く,中間少年は三〇・一%,年少少年は六・七%となっている。 III-99表 保護観察処分少年(新受)の性別・年齢層別人員(昭和41〜45年) また,同表により,昭和四五年の新受人員について,性別,年齢層別の状況をみると,男子は二六,三五四人(九六・二%),女子は一,〇二九人(三・八%)であり,男子では,年長少年の六四・〇%に次いで,中間少年の二九・六%,年少少年の六・四%となっているが,女子では,中間少年が四三・二%,年長少年が四三・一%と,いずれも四〇%台であり,年少少年が一三・六%となっている。(二) 少年院仮退院者 昭和四五年中に新たに受理した少年院仮退院者の総数は三,一六七人で,前年に比べ,七二八人の減少となっている。同年末現在の少年院仮退院者は,四,四六八人で,保護観察対象者総数の五・一%にあたる。
少年院仮退院者の新受人員について,最近五年間の年齢層別の推移をみたのが,III-100表である。これによると,総数では,逐年減少の一途をたどっており,年齢層別にみると,昭和四二年に年長少年がやや増加を示しただけで,各年齢層とも,いずれも逐年減少を示している。また,各年齢層別人員の総数に占める割合をみると,年長少年が最も多く,またその割合も逐年増加し,昭和四五年においては,総数の七五・三%を占め,次いで,中間少年の二二・五%,年少少年の二・二%となっている。 III-100表 少年院仮退院者(新受)の性別年齢・層別人員(昭和41〜45年) さらに,昭和四五年の新受人員について,性別・年齢層別をみると,男子は二,八三〇人(八九・四%),女子は三三七人(一〇・六%)であるが,男子では,年長少年が七六・六%,中間少年が二一・二%,年少少年が二・二%であり,女子では,年長少年の六三・八%に次いで,中間少年の三四・一%,年少少年の二・一%となっている。(三) 少年の保護観察の成績等 昭和四五年中に保護観察を終了した保護観察少年二九,一九一人および少年院仮退院者四,四五三人について,保護観察終了時の成績等の状態に応じて,良好,普通,不良,およびその他の四群に分け,それぞれ,総数に対する割合をみたのがIII-101表の[1]ないし[3]である。ここに,良好群とは,保護観察処分少年について,「解除」および期間満了者中「良」,「やや良」,「良好停止中」の者を,少年院仮退院者について,「退院」および期間満了者中「良」,「やや良」の者をいい,不良群とは,保護観察処分少年について,「保護処分取消」および期間満了者中「不良」の者を,少年院仮退院者について,「戻し収容」,「保護処分取消」および期間満了者中「不良」の者をいい,普通群とは,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれについても,期間満了者中「普通」の者をいい,「その他」とは,保護観察処分少年については良好停止以外の「評定除外」の者,仮退院者については「評定除外」の者をいう。
III-101表 保護観察の成績別構成比(昭和45年) まず,同表[1]により,保護観察処分少年および少年院仮退院者について,それぞれ,右の四群の総数に占める割合をみると,保護観察処分少年では,良好群が六三・九%と過半数を占め,普通群が一五・四%,不良群が九・六%という割合を占めているのに対し,少年院仮退院者では,良好群が三三・七%,普通群が二三・〇%,不良群が一九・二%となっており,保護観察処分少年のほうが少年院仮退院者よりも,その成績は一般的に良好であるといえる。男女別にみると,保護観察処分少年では,男子の良好群は六四・二%であるが,女子のそれは,五七・九%で,男子よりやや低い。これに対し,少年院仮退院者では,男子の良好群三二・九%に対し,女子のそれは三九・七%で,男子よりやや高い。年齢層別にみると,保護観察処分少年では,良好群は,年長少年の六七・八%が最も高く,以下,年齢の低下に伴い,良好群の占める割合は低くなっているが,各層とも五〇%をこえている。これに対し,少年院仮退院者では,良好群は,各年齢層とも三〇%台で,保護観察処分少年に比べ,その成績はかなり劣っているといえるが,とりわけ,中間少年が,良好群三〇・四%,不良群二六・二%で,その成績は最も劣っている。 [2]表は,教育程度別にみたものであるが,これによると,保護観察処分少年,少年院仮退院者とも,学歴の進むにしたがって,良好群の占める割合が高くなっている, [3]表は,居住状況別にみたものであるが,これによると,保護観察処分少年では,保護委託先に起居する者を除き,いずれも良好群が五〇%をこえており,とくに,家族・親族と同居する者が六七・一%となっていて,その成績は最も良い。保護委託先に起居する者は,良好群一五・一%,不良群三四・四%で,最も劣っている。少年院仮退院者では,良好群の最も高いのは,家族・親族と同居する者であるが,その割合は三七・八%にすぎない。 さらに,III-102表は,昭和四一年から同四五年までの間に,保護観察期間中に再犯に及び,刑事処分または保護処分を受けた者の割合を,処分を受けた年次にしたがって,保護観察開始の当年から第五年目までに分けて,保護観察処分少年と少年院仮退院者とを比較したものであるが,これによると,保護観察処分少年では,保護観察開始の当年から第三年目までに一二・五%が再犯に及んで処分を受けているのに対し,少年院仮退院者では,それが二六・九%と,保護観察処分少年の二倍を上回り,第五年目では,保護観察処分少年の一五・二%に対し,少年院仮退院者は三〇・〇%と,二倍に近い割合となっている。 III-102表 保護観察処分少年および少年院仮退院者の保護観察期間中の再犯処分比較(昭和41〜45年) このようにみてくると,少年院仮退院者は,保護観察処分少年に比べ,一般的にその成績がかなり劣っているといえるが,これは,少年院仮退院者は,資質や環境の面により多くの問題があり,その処遇に困難な点が多いことを示している。 |