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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/五/3 

3 出頭状況

 保護観察に付された少年は,その当初,みずから,または親や保護者と保護観察所に出頭して,担任の保護観察官に会い,懇談したり,説示をうけたりする。将来の保護観察の状況は,これによって大きく左右されるから,この出頭は,はなはだ重要である。
 保護観察の当初における対象者の出頭状況については,さきにあげたIII-52表のとおり,一〇日以内に出頭した者の割合は,一号観察の場合は九〇・七パーセントで,四号観察ほどはわるくはないが,二号観察や三号観察よりも三ないし四パーセント低い。しかも,保護観察所に出頭した者のみについての割合からすると,一号観察のそれは,六五・五パーセントというきわめて低いものになるのである。これは,一号観察の少年に,保護観察開始の時に保護観察所に出頭することのかなり困難な事情が伏在していることを意味する。普通一般には,少年は,家庭裁判所で審判のあった直後に,保護者とともに保護観察所に出頭するのがのぞましいが,その場合に,少年自身よりも,保護者のほうが保護観察に無理解ないし非協力で,それが実行されないこともあるようだし,そうでなくとも,保護者の経済事情,つまり,保護観察所に行く交通費にもこまるとか,保護観察所まで同伴すると,その日の稼ぎが完全に犠牲になることなどという問題が,案外に大きな支障になっているようである。そして,こうした事情は,保護観察所を遠く離れた家庭裁判所の支部で審判されたケースでは,いっそう強まる。実情として,府県によっては,一泊しなければ保護観察所に往復できないようなところが少なくない。保護観察所では,こうした少年と保護者との立場を考慮し,家庭裁判所支部の所在地に,保護観察官の補助者として特種事務処理保護司を配置して,審判の当日に保護観察官の面接を代行させ,本人をすみやかに保護観察下に入れるよう措置している現状である。