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平成29年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/3

3 就労支援

刑務所出所者等を円滑に社会復帰させるためには,就労を確保し,生活基盤を安定させることが重要である。この項では,就労支援に関する取組を施設内における取組と社会内における取組に分けて概観する。

(1)施設内における取組

平成28年の入所受刑者のうち約7割が犯行時に無職であり(5-2-3-4図CD-ROM参照),再入者では初入者に比べて無職であった者の占める割合が高いこと(同図参照)などから,矯正施設においては,受刑者・少年院在院者(以下この項において「受刑者等」という。)の在所・在院中から,出所・出院後の就労の確保に向けて様々な取組を実施しているが,その内容を関係機関別に見ると次のとおりである。

ア ハローワーク
(ア)社会福祉士等の配置

受刑者等が出所等した後,直ちに就労できるようにするための施策として,平成18年度から厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策が実施されている(第2編第4章第2節4項参照)。

7-3-1-10図は,受刑者等の矯正施設への入所時から出所前までの各段階における就労支援の概要を示したものである。

7-3-1-10図 受刑者・少年院在籍者に対する就労支援対策の概要
7-3-1-10図 受刑者・少年院在籍者に対する就労支援対策の概要

刑務所出所者等総合的就労支援対策において,就労支援の対象となるのは,受刑者・少年院在院者,保護観察対象者及び更生緊急保護対象者であるが,このうち,刑務所出所者等就労支援事業の対象となるのは,稼働能力・就労意欲を有し,同事業への参加を希望しており,求人者に対する前歴等の開示に同意しているなどの要件を満たす者である。前歴等の開示に同意しない場合は,準支援対象者として限定的な支援の対象となる。同事業において,矯正施設は,公共職業安定所(ハローワーク)と連携し,支援対象者の希望や適性等に応じて計画的に就労支援を行っており,また,施設内において,ハローワーク職員が支援対象者に対する職業相談,職業紹介,職業講話等を実施している。

なお,受刑者に対し,刑務所在所中から就職内定へ向けた支援を積極化すること,刑務所出所後のハローワーク訪問への動機付けを行うことなどを目的として,平成27年度からハローワーク職員が指定された刑務所に相談員として駐在する取組が開始されている。この取組は,29年度は刑務所25庁(刑務支所を含む。)で実施されており,刑務所に駐在しているハローワーク職員は,支援対象者である受刑者に対し,複数回にわたる職業相談,職業紹介等を実施するとともに,就労支援対象者の帰住予定地に所在するハローワークとも連携するなどして,早期の段階から濃密な支援を実施している。

7-3-1-11図は,刑務所出所者等就労支援事業対象者の人員(施設内における支援に限る。)及び支援対象者の就職件数の推移(平成18年度以降)を見たものである。同事業の支援対象者は,事業を開始した平成18年度以降増加傾向にあり,28年度は4,023人であった。同事業の支援対象者の就職件数は,26年度から3年連続で増加し,28年度は25年度の9.6倍であった(厚生労働省職業安定局の資料による。)。

7-3-1-11図 刑務所出所者等就労支援事業対象者(施設内)の人員・就職件数の推移
7-3-1-11図 刑務所出所者等就労支援事業対象者(施設内)の人員・就職件数の推移
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(イ)受刑者等専用求人

刑務所出所者等就労支援事業の一環として,平成26年2月には,求人と求職のマッチングを更に促進するため,受刑者等専用求人の制度が導入された(第2編第4章第2節4項参照)。この制度は,受刑者等が刑事施設等入所中に採用面接を円滑かつ効果的に実施できるようにするため,受刑者等の雇用を希望する事業主が,採用面接を希望する刑事施設等を指定した上で,ハローワークに求人を登録することができるようにするものであり,その概要は,7-3-1-12図のとおりである。ハローワークから求人情報の提供を受けた刑事施設等は,受刑者等に対し積極的に求人情報を周知し,これを見た受刑者等は施設内において早期に就職先の具体的なイメージを持つことが可能となり,社会復帰に向けた意欲が一層喚起されるなどの効果が期待される。

7-3-1-12図 受刑者等専用求人 ハローワークとの連携の概要
7-3-1-12図 受刑者等専用求人 ハローワークとの連携の概要
イ 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)

受刑者等専用求人制度は,前記のとおり,受刑者等の雇用を希望する事業主が,採用面接を希望する刑事施設等を指定した上で,ハローワークに求人を登録するものであるが,事業主には,勤務地や取得資格といった求人条件に適合する受刑者等がどの刑事施設等に収容されているかに関する情報がなく,事業主と受刑者等とのマッチングが限定的にしか行えないという問題点があった。

そこで,受刑者等の就労先を入所中に確保し,出所後直ちに就労に結び付けるため,平成28年度に,東京矯正管区及び大阪矯正管区に矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」。以下「コレワーク」という。)が設置された(第2編第4章第2節4項参照)。

コレワークでは,全国の受刑者等の取得資格,出所後の帰住予定地,出所予定時期等の情報を一括管理し,同情報を活用して,受刑者等の雇用を希望する事業主に対し,その雇用ニーズに適合する者を収容している施設の情報を提供している(雇用情報提供サービス)が,その概要は,7-3-1-13図のとおりである。また,事業主からの様々な照会に応じ,刑務所出所者等就労奨励金制度,トライアル雇用制度等の事業主を対象とした支援制度について紹介するとともに,矯正施設見学会,職業訓練見学会,矯正展等の案内も行うほか,受刑者等の雇用に関する事業主の問題の解決に協力している(就労支援相談窓口サービス)。コレワークは,事業主の負担を軽減することを目的として,選考書類の提出の仲介,採用面接の日程調整等幅広い支援も行っている(採用手続支援サービス)。

なお,コレワークの運営が開始された平成28年11月から29年5月末日までの就職内定件数は,31件であった。

7-3-1-13図 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)の雇用情報提供サービス
7-3-1-13図 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)の雇用情報提供サービス
ウ 民間団体・企業

職親プロジェクト第2編第4章第2節4項参照)では,少年院出院者・刑務所出所者に就労体験の機会を提供することで,円滑な社会復帰を支援するとともに,再犯率の低下の実現を目指すこととしており,日本財団は,矯正施設,保護観察所等関係機関と連携し,5年間で100人の少年院出院者・刑務所出所者の社会復帰を支援することとしている。平成29年5月末現在で,職親プロジェクトには78社が参加し,着実に実績を積み重ねている(日本財団の資料による。)。

また,職親プロジェクトに参加している企業(以下「職親企業」という。)に就職した少年院出院者・刑務所出所者が早期に離職する状況を改善するため,日本財団の提案により,職親プロジェクトの対象庁において,仕事フォーラムが開催されている。仕事フォーラムは,職業倫理向上を目的として実施される職親企業の代表者による「職業講話」,職親企業の代表者が少人数の少年院在院者・受刑者と出院・出所後のことなどについて話し合う「グループワーク」,幅広い業種の企業情報を提供する「企業情報提供会」で構成される。仕事フォーラムでは,受刑者等の抱いている仕事に対するイメージと現実とのギャップを埋めるとともに,適切な仕事観を持たせることにより,出所後の職場定着を図ることを目指している。

エ 職業訓練における外部専門家

刑事施設で実施している職業訓練は,受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ,又は職業上有用な知識や技能を習得させることを目的としており,矯正処遇である作業として実施され,受刑者の出所後の就労に役立たせ,職業人として更生させることを目指して行われる(第2編第4章第2節2項(5)参照)。刑務所出所者等総合的就労支援対策においては,刑事施設内での就労支援対策の一つとして,雇用情勢に応じた職業訓練を実施することとしており,刑事施設においては,雇用する側の事業主が,どのような職業スキルを有する受刑者であれば雇用するかといった視点も含め,既存の職業訓練の内容を確認して見直しを図るとともに,有効求人倍率等を参考に,将来的に雇用が見込まれる職種を新たな職業訓練の種目として取り入れ,社会の雇用ニーズに合致した職業訓練を順次開設するなど,その充実に努めている。

刑事施設における職業訓練の種目数・定員の推移(最近10年間)は,7-3-1-14表のとおりである。平成28年度には,25種目の職業訓練が実施されたが,職業訓練定員総数は7,519人(前年度比910人(13.8%)増)であり,19年度(2,824人)と比べると約2.7倍となっている。

7-3-1-14表 刑事施設における職業訓練の種目数・定員の推移
7-3-1-14表 刑事施設における職業訓練の種目数・定員の推移
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平成19年度及び28年度の刑事施設における資格・免許の取得状況は,7-3-1-15表のとおりである。28年度における資格・免許試験の受験者人員の総数は9,033人で,19年度と比べて,約2.5倍となっている。19年度と28年度を比較して合格者数が大きく増加している資格・免許は,消防設備士,特別教育(危険又は有害な業務に関する安全又は衛生のための特別の教育),介護職員初任者研修(訪問介護員),技能講習及び技能検定であった。

7-3-1-15表 刑事施設における資格・免許の取得状況
7-3-1-15表 刑事施設における資格・免許の取得状況
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職業訓練の実施に当たっては,高度な技術指導が必要となることから,主に作業専門官(作業の技術指導等を行う刑事施設職員)のほか,当該職業訓練種目に関する専門的知識・技能を有する外部専門家が指導に当たっており,受刑者の職業的技術・能力の向上を図っている。平成28年度における刑事施設の職業訓練における外部専門家の関与状況は,7-3-1-16表のとおりである。

7-3-1-16表 刑事施設の職業訓練における外部専門家の関与状況
7-3-1-16表 刑事施設の職業訓練における外部専門家の関与状況
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オ 受刑者の外出・外泊における関係機関

受刑者は,一定の要件を備えている場合には,刑事施設の職員の同行なしに,刑事施設から外出し,又は7日以内の期間で外泊することを許されることがある(第2編第4章第2節1項(3)参照)。受刑者の外出・外泊の許否は,受刑者の収容の確保及びその円滑な社会復帰の両面を考慮して慎重に判断する必要があり,保護観察所,更生保護施設等の関係機関のほか,出所後に就職を予定している事業主等の理解と協力を得て実施される。

(2)社会内における取組

社会内においても,保護観察終了時に無職であった者の取消・再処分率が顕著に高いことなどを踏まえ(5-2-4-4図5-2-5-6図参照),保護観察所は,保護観察対象者等の就労の確保等に向け,ハローワークや協力雇用主を始めとする関係機関・団体等との協力・連携に努めてきた。

7-3-1-17図は,保護観察対象者の保護観察終了時の無職率等の推移(最近10年間)を見たものである。保護観察処分少年及び少年院仮退院者については,無職率が低下傾向にある一方で,仮釈放者及び保護観察付全部執行猶予者の無職率はおおむね横ばいで推移している。刑務所出所者等の就労の確保は依然として厳しい状況にあり,こうした状況を踏まえ,より多くの保護観察対象者等が支援を受けられるよう,就労の確保等に向けた民間協力と多機関連携が進められている。

7-3-1-17図 保護観察終了者の人員・無職率の推移
7-3-1-17図 保護観察終了者の人員・無職率の推移
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ア ハローワーク

前項で記載したとおり,平成18年度から法務省と厚生労働省が連携して実施している刑務所出所者等総合的就労支援対策において,刑務所出所者等就労支援事業を実施しており,社会内では,ハローワークの職員が,保護観察所等の担当者とチームを作り,就労支援の方法を検討した上,担当者制で職業相談・職業紹介を行っているほか,トライアル雇用,就労支援セミナーや事業所見学,職場体験講習等の支援メニューを用意し,対象者に応じて実施している。また,この事業に関連して,雇用主が刑務所出所者等を雇用して損害を被った場合に見舞金を支給する身元保証制度が活用されている。

刑務所出所者等就労支援事業における保護観察対象者等の支援について,同事業対象者の人員及び就職件数の推移(平成18年度以降)は7-3-1-18図のとおりである(施設内における支援の状況については,7-3-1-11図参照)。平成18年度に開始して以来,同事業対象者の就職件数は増加傾向にあり,25年度以降は毎年2,000件を上回っている。

7-3-1-18図 刑務所出所者等就労支援事業対象者(社会内)の人員・就職件数の推移
7-3-1-18図 刑務所出所者等就労支援事業対象者(社会内)の人員・就職件数の推移
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イ 協力雇用主
(ア)協力雇用主の概況

協力雇用主第2編第5章第5節4項(3)参照)は,社会内の就労支援において中核となる民間協力者である。犯罪対策閣僚会議が平成26年12月に決定した「宣言:犯罪に戻らない・戻さない〜立ち直りをみんなで支える明るい社会へ〜」では,協力雇用主による刑務所出所者等の雇用の重要性に鑑み,2020年(平成32年)までに「犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍」の約1,500社にするという目標が掲げられた(第5編第1章1項参照)。また,再犯防止推進法は,協力雇用主について,「犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として,犯罪をした者等を雇用し,又は雇用しようとする事業主をいう。」と規定して,我が国の法律上初めてその定義をするとともに,国の行う契約等で協力雇用主の受注機会の拡大を図るよう配慮すべきことを明記した(同法14条)。

7-3-1-19図は,協力雇用主数の推移(最近10年間)を業種別及び従業員数による規模別に見たものである。協力雇用主数は増加を続けており,平成29年は20年と比較して約2.8倍となっている。

業種別に見ると,平成29年は建設業,サービス業,製造業の順で多く,この3業種で全体の約4分の3(76.7%)を占めている。また,29年の協力雇用主数を20年と比べると,サービス業(約4.1倍)及び農林漁業(約5.4倍)の増加が顕著であり,全体に占める割合も上昇している。

規模別に見ると,平成29年は従業員29人以下の協力雇用主が全体の過半数(56.3%)を占める一方で,従業員が100人以上の協力雇用主は全体の4.7%に過ぎず,協力雇用主の多くをいわゆる中小企業が占めている。

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7-3-1-19図 協力雇用種数の推移(業種別・規模別)
7-3-1-19図 協力雇用種数の推移(業種別・規模別)
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7-3-1-20図は,実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主数及び協力雇用主全体に占める比率の推移(最近10年間)を見たものである。実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主数は大きく増加しており,平成29年(774人)は20年(309人)の約2.5倍となっている。ただし,全協力雇用主数に占める割合は,年によって変動があるものの,おおむね横ばいで推移している(CD-ROM参照)。

7-3-1-20図 実際に刑務所出所社を雇用している協力雇用種の数・比率の推移
7-3-1-20図 実際に刑務所出所社を雇用している協力雇用種の数・比率の推移
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7-3-1-21図は,各年の4月1日現在において,協力雇用主に雇用されている保護観察又は更生緊急保護の対象者(以下この項において「被雇用者」という。)の人員の推移(最近10年間)を協力雇用主の業種別及び従業員数による規模別に見たものである。被雇用者数は,平成21年(435人)を底として22年から増加傾向となり,29年は,前年より減少したものの,21年と比べると,約2.8倍となっている(CD-ROM参照)。

業種別に見ると,平成29年は建設業(64.5%)が最も多く,これに次ぐサービス業(14.3%)と合わせて全体の約8割を占めている。29年の被雇用者数を20年と比べると,多くの業種で増加する中,製造業では約半数にまで減少している。

規模別に見ると,平成29年は従業員29人以下の協力雇用主による被雇用者が全体の過半数(58.3%)を占めている。また,従業員が100人以上の協力雇用主による被雇用者は全体の9.1%であり,全協力雇用主数のうち従業員が100人以上の協力雇用主の占める割合(4.7%)と比べて高い(7-3-1-19図参照)。

7-3-1-21図 被雇用者の人の推移(業種別・規模別)
7-3-1-21図 被雇用者の人の推移(業種別・規模別)
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7-3-1-22図は,被雇用者の人員の推移(最近10年間)を保護観察等の種類別に見たものである。平成29年は仮釈放者(43.6%)の割合が最も高く,これに次ぐ更生緊急保護対象者(17.6%)と合わせて全体の約6割を占めている。また,29年の被雇用者数を20年と比べると,少年院仮退院者(約3.8倍)及び保護観察処分少年(約2.3倍)の増加が顕著であり,全体に占める割合も上昇している。

7-3-1-22図 被雇用者の人の推移(保護観察等の種類別)
7-3-1-22図 被雇用者の人の推移(保護観察等の種類別)
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(イ)協力雇用主を支える取組

保護観察官と協力雇用主が緊密に連携し,協力雇用主に雇用された者の職場定着を促進するとともに,協力雇用主の不安等の軽減を図ることにより,協力雇用主による雇用を拡大する方策の一つとして,平成25年から,更生保護施設又は自立準備ホームに委託されている仮釈放者又は更生緊急保護対象者を雇用し,職場定着のための働き掛けを行った協力雇用主に対して謝金を支給する取組が実施されてきた。27年度からは,これを更に発展させて,保護観察対象者又は更生緊急保護対象者を雇用し,就労継続に必要な技能及び生活習慣等を習得させるための指導及び助言を行う協力雇用主に対して,就労・職場定着奨励金及び就労継続奨励金を支給する刑務所出所者等就労奨励金制度が実施されている。28年度に奨励金を適用した件数は,就労・職場定着奨励金が3,107件,就労継続奨励金が385件であった(法務省保護局の資料による。)。

また,国や地方公共団体では,協力雇用主に対する競争入札に係る優遇措置や,協力雇用主の立場に立ち,就労支援策の一層の充実を図ることなどを目的とした保護観察対象者の雇用の取組等が行われている(本編第2章第2節2項(1)参照)。

なお,民間企業・団体における協力雇用主に関連した動きとして,平成21年に中央の経済諸団体や大手企業関係者等が発起人となり,特定非営利活動法人「全国就労支援事業者機構」が活動を開始した。また,地方単位の就労支援事業者機構(都道府県就労支援事業者機構)が,全国50か所(各都府県に1か所ずつ,北海道に4か所)に設立され,22年7月までに50か所全てが特定非営利活動法人となった。都道府県就労支援事業者機構では,協力雇用主に対する助成事業や交流・研修・広報事業等を行っており,保護観察所は,都道府県就労支援事業者機構とも連携を取りながら,保護観察対象者等の就労支援を進めている。

ウ 更生保護就労支援事業所

保護観察所では,新たな就労支援策として,モデル事業の実施を経て平成26年度から更生保護就労支援事業を実施しており,就労支援に関するノウハウや企業ネットワーク等を有する民間団体が,国から委託を受けて更生保護就労支援事業所を設置し,当該事業所に配置された専門的な知識及び経験を有する就労支援員が,関係機関等と連携して支援を行っている。7-3-1-23図は,更生保護就労支援事業の概要を示したものである。

7-3-1-23図 更生保護就労支援事業の概要
7-3-1-23図 更生保護就労支援事業の概要

更生保護就労支援事業所は,矯正施設入所中から支援対象者の職業適性や希望を把握して,地域の雇用情報を提供するなどし,社会内において速やかに就職できるよう就職活動支援を行ったり,支援対象者がその適性に合った業種に就労できるようにするための協力雇用主の新規開拓や,協力雇用主が安心して刑務所出所者等を雇用できるようにするためのサポートなどの雇用基盤整備を行っている。平成29年度は,20の保護観察所で更生保護就労支援事業を実施しており,このうち,東日本大震災による被災が特に甚大である盛岡,仙台及び福島の各保護観察所における事業については,更生保護被災地域就労支援対策強化事業と位置付け,就職後に職場訪問をして支援対象者に必要な助言をしたり,協力雇用主の相談に応じたりするなどの職場定着支援及び就労の確保に必要な適切な定住先を確保するための住まい探しや,収入状況に応じた安定した生活の維持に関する助言を行うなどの定住支援を併せて行っている。また,国の事業としてではなく,地方公共団体の事業として,職場定着支援等を行っている更生保護就労支援事業所もある(本編第2章第2節2項コラム3参照)。

なお,平成27年度に更生保護就労支援事業を実施した保護観察所(盛岡,仙台及び福島の3庁を除く。)において,就職活動支援が終了した者は1,148人であり,そのうち908人(79.1%)が就職に至っている。また,同年度に雇用基盤整備を行った結果,954人が新規に協力雇用主として開拓された(法務省保護局の資料による。)。