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平成29年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/コラム19

コラム19 矯正就労支援情報センター室(コレワーク)の取組

「コレワークの仕組みにおいては,各方面の方々の御理解と御協力なくして受刑者等を就労につなげていくことなどは難しいことから,まず理解してもらって,どう連携し関係を構築していくのかを考えることから始めました。」と東京矯正管区矯正就労支援情報センター室(以下「コレワーク東日本」という。)室長は語る。

コレワーク東日本は,さいたま新都心に位置する合同庁舎の一階に明るく開放的なオフィスを構える。コレワークの業務は東日本・西日本の両コレワークで共通であり,主として事業主からの個々の相談に応じ,全国の受刑者・少年院在院者の資格,職歴,出所・出院後の帰住予定地などの情報を一括管理するデータベースを用いて,事業主側の雇用ニーズに合致する者を収容する矯正施設を紹介するとともに,受刑者等に関する各種の就労支援制度の情報提供・案内等のサービスを行っている。コレワーク東日本では,協力雇用主(第2編第5章第5節4項(3)参照)以外の事業主からの相談も多いことから,協力雇用主の登録に向けた保護観察所への橋渡しも行っている。なお,受刑者個人を直接紹介してもらえると思って連絡してくる事業主に対しては,矯正施設を紹介した後,面接,採用に至るまでの一連の流れを丁寧に説明しているという。相談を受けた事業主の業種は土木建築関係が約半数を占め,次いで,介護関係,運送関係,飲食関係等が多いとのことであった。

コレワーク東日本では,開設から間もないため,職員が東日本各地を回り,労働局,ハローワーク,保護観察所,就労支援事業者機構(本項(2)イ(イ)参照),土木建築や運送などの関係団体等を対象に業務の説明と協力依頼等を行っているという。同室長は「コレワークの説明に当たって,まず矯正の広報が大切。就労支援がなぜ必要か,刑務所や少年院の中で何をやっているかなど,矯正施設の取組の実情を知ってもらい理解してもらうことが重要。」と強調する。例えば,多様な職業訓練・職業指導で,多くの受刑者・少年院在院者が資格や免許を取得し,又は技術を習得していることなどを知らない事業主等も多く,矯正施設で行われている就労に向けた取組の実情を伝えると,「そんなことまでしているのですね。」といった反応が返ってくるという。他方で,こうした各地での業務の説明等を通じ,逆に相手の事業主等から取り巻く環境の変化など各業界の課題等を聴くことも多く,コレワークの業務にも役立つ知見を得ることができると話す。

今後の課題としては,事業主等に向けた広報と関係機関との連携はもとより,相談を受けた事業主のニーズに対して,きめ細かなサービスを提供し,フォローアップしていくことであるという。これまでの矯正施設における受刑者等の「個人」を対象とし,一人ひとりの希望等に応じた就労支援のやり方に加え,「事業主」を対象とし,その事業主のニーズを踏まえた就労支援というコレワークの取組が定着することで,より一層,受刑者等と事業主のマッチングを促進し,効果的な就労支援につながるとのことであった。

コレワーク東日本の外観【写真提供:東京矯正管区矯正就労支援情報センター室】
コレワーク東日本の外観
【写真提供:東京矯正管区矯正就労支援情報センター室】