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1 少年時の状況による分析
(1)保護処分歴

7-3-3-1-1図は,調査対象者が本件非行による少年院送致までに受けた保護処分歴別に刑事処分状況を見たものである。保護処分歴のない者に比べて,保護処分歴のある者の刑事処分率は高く,特に,少年院・児童自立支援施設等送致歴のある者において顕著である。また,実刑に至った者の比率は,保護処分歴のない者に比べて,保護処分歴を有する者で高く,特に,少年院送致歴を有する者において高い。さらに,保護処分として児童自立支援施設等送致歴のみを有する者については,実人員が6人と少ないものの,実刑となった者の比率は,約3割と,他の保護処分歴を有する者で実刑となった者の比率よりも高い。なお,本件非行時においては,少年院送致の対象は,14歳以上の少年に限られており(平成19年法律第68号による改正前の少年法・少年院法),14歳未満の少年に対する保護処分は,保護観察又は児童自立支援施設等送致に限られていた。


7-3-3-1-1図 保護処分歴別刑事処分状況
7-3-3-1-1図 保護処分歴別刑事処分状況

児童自立支援施設等送致歴のみを有する者のほか,少年院送致歴又は保護観察歴を有する者を含めて,児童自立支援施設等送致歴の有無別に刑事処分状況を見ると,7-3-3-1-2図のとおりである。児童自立支援施設等送致歴のある者の実人員は21人と少ないものの,そのうち刑事処分を受けた者の比率は,同送致歴のない者に比べて顕著に高く,実刑を受けた者の比率も同様に高い。一般的に児童自立支援施設等在所児童は,少年院入院者より,低年齢層の割合が高いこと(7-2-2-4図参照)を踏まえると,低年齢時から要保護性が高い状態にあった者は,その後の改善更生に困難が伴うことがうかがえる。


7-3-3-1-2図 児童自立支援施設等送致歴別刑事処分状況
7-3-3-1-2図 児童自立支援施設等送致歴別刑事処分状況

次に,少年院での処遇区分等に着目してみる。7-3-3-1-3図は,処遇区分及び少年院送致回数別に刑事処分の状況を見たものである。調査対象者の中には,本件出院後に,再度の少年院送致処分を受けた者もいることから,最終の少年院における処遇区分,その処分を含めた送致回数を基にしている。まず,処遇区分別では,短期処遇(一般短期処遇及び特修短期処遇をいう。第3編第1章第4節2項参照)となった者は,長期処遇の者に比べて,刑事処分を受けた者の比率が低くなっている。短期処遇の者は,その問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きい者と考えられることから,少年を刑事処分に移行させないためには,問題性が軽微な段階での教育・指導等の充実が有効であるといえる。また,2回以上少年院送致となった者については,刑事処分を受けた者の比率が高いことから,再入院者に対する指導も極めて重要であるといえる。


7-3-3-1-3図 少年院処遇区分等別刑事処分状況
7-3-3-1-3図 少年院処遇区分等別刑事処分状況

(2)少年院における状況

少年院においては,規律に違反した在院者に対し,訓戒,謹慎等の懲戒を行うことができる。7-3-3-1-4図は,調査対象者の在院中の懲戒処分回数別刑事処分状況を見たものであるが,回数が多くなるほど,刑事処分を受けた者,実刑を受けた者の比率が高くなっている。少年院においては,少年の改善更生のための各種指導が行われるところ,規律違反行為は,本人の改善更生に対する真摯な態度と相反するものと認められることから,本人の更生意欲の大小は,その後の刑事処分に至る行為の有無と関係を有するものと考えられる。


7-3-3-1-4図 少年院における懲戒処分回数別刑事処分状況
7-3-3-1-4図 少年院における懲戒処分回数別刑事処分状況

(3)保護環境

7-3-3-1-5図は,本件出院時の引受人別刑事処分状況を見たものであるが,引受人が誰であるかによって刑事処分の状況に大きな違いはなかった。


7-3-3-1-5図 本件出院時引受人別刑事処分状況
7-3-3-1-5図 本件出院時引受人別刑事処分状況

次に,引受人との関係性を探るために,在院中の面会状況に着目した。7-3-3-1-6図は,親が引受人である者について,在院中の親族との面会回数別刑事処分状況を処遇区分別に見たものである(親族との面会には,引受人ではない親族との面会を含む。)。短期処遇では,刑事処分となった者の比率も実刑となった者の比率も,面会回数によって大きな差は認められないが,長期処遇においては,親族との面会が全くなかった者又は1回であった者は,面会が2回以上あった者に比べて,実刑に至った者の比率が顕著に高かった(親が引受人である場合の親族との平均面会回数は,短期処遇では約4回,長期処遇では約8回である。)。少年院における面会は,家族との関係を維持させ,家族関係の調整を図る上で重要な機会であり,在院者の社会復帰の心構えを養う上でも効果的な手段であるため,面会がない場合などは,少年院から,保護者等に対し来院するよう働き掛けが行われる。面会回数は,引受人の居住地と少年院との距離にも影響されるが,長期にわたって面会がないことは,家族関係の維持,調整等に困難をもたらすことが多く,そうした状況が出院後の本人の生活の安定にも影響を与え,刑事処分に至る行動につながりやすいと考えられる。


7-3-3-1-6図 少年院における親族との面会回数別刑事処分状況
7-3-3-1-6図 少年院における親族との面会回数別刑事処分状況

(4)保護観察中の生活状況等

ア 就労状況

7-3-3-1-7図は,保護観察(本件出院(仮退院)に係る保護観察である。以下この項において同じ。)終了時における就労状況別の刑事処分状況を見たものである。刑事処分に至った者の比率は,保護観察終了時に無職であった者において,有職であった者や学生・生徒等であった者よりも高く,無職の状態にあることは,犯罪のリスク要因の一つであると考えられる。


7-3-3-1-7図 保護観察終了時の就労状況別刑事処分状況
7-3-3-1-7図 保護観察終了時の就労状況別刑事処分状況

次に,就労状況に影響を与えている要因について見る。7-3-3-1-8図は,本件非行時の教育程度別に保護観察終了時の就労状況等を見たものである。一般に,教育程度により,就職の難易度に差があるところ(7-1-4図参照),調査対象者においても,教育程度が高いほど無職の者の比率が低い傾向にあることがうかがわれる。無職の状態が刑事処分につながりやすいことは前記のとおりであり,少年・若年犯罪者の再犯を防止する上で,教育程度が高くなく,就職の上で困難を伴うことが予想される少年・若年犯罪者に対して,就労支援を行うことや,矯正施設において高等学校卒業程度認定試験を実施することの意義は大きい。


7-3-3-1-8図 本件非行時の教育程度別保護観察終了時の就労状況
7-3-3-1-8図 本件非行時の教育程度別保護観察終了時の就労状況

また,調査対象者のうち長期処遇の少年について,少年院在院中に取得した資格・免許の取得状況別に保護観察終了時の就労状況を見ると,7-3-3-1-9図のとおりである。資格・免許の取得がなかった者に占める無職者の比率は37.8%であったが,個別に指定された職業補導の種目に関連のない資格・免許のみを取得した者では25.4%,関連のある資格・免許を取得した者では18.8%と低かった。保護観察終了時に就いていた職業を見ると,少年院において取得した資格等が,全て直接に就労に結びついているものではないものの,就労や自立への意欲の向上などの点を含め,少年院における職業補導等は,就労に一定の効果があると考えられる。


7-3-3-1-9図 少年院在院中の資格・免許の取得状況別就労状況(長期処遇)
7-3-3-1-9図 少年院在院中の資格・免許の取得状況別就労状況(長期処遇)

イ 保護観察終了事由

7-3-3-1-10図は,保護観察終了事由別刑事処分状況を見たものである。保護処分取消しの者(再非行等により処分が取り消された者)においては,その後の刑事処分において実刑となった者の比率が高く,退院者(再非行のおそれがないとして保護観察の期間満了前に退院となった者)においては,同比率は極めて低く,刑事処分なしの者の比率が高い。このことから,少年院出院後の保護観察期間中の生活の安定を図ることが,刑事処分に至るのを抑止する大きな要因であるといえる。


7-3-3-1-10図 保護観察の終了事由別刑事処分状況
7-3-3-1-10図 保護観察の終了事由別刑事処分状況