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2 少年時の非行内容による分析
(1)概況

少年時の問題性ごとに刑事処分状況の特徴を分析するために,本件非行名によって分類した非行群別に,刑事処分の有無,主要刑事処分及び犯罪類型別の人員等を見ると,7-3-3-2-1表のとおりである(非行群・犯罪類型について,266頁参照)。


7-3-3-2-1表 非行群別刑事処分状況等
7-3-3-2-1表 非行群別刑事処分状況等

7-3-3-2-2図は,非行群別に,刑事処分状況を見たものである。


7-3-3-2-2図 非行群別刑事処分状況
7-3-3-2-2図 非行群別刑事処分状況

調査対象者全体(総数)と比べ,窃盗非行群及び粗暴非行群では,刑事処分を受けた者の構成比及び実刑となった者の構成比がいずれも高く,特に,窃盗非行群でその傾向は顕著であり,それ以外の者と比べて少年院出院後に犯罪を行うおそれが高い。一方,性非行群及び重大非行群においては,調査対象者全体と比べ,刑事処分を受けた者の構成比は低く,実刑になった者の構成比も顕著に低い。薬物非行群及び交通非行群では,刑事処分を受けた者の構成比は,調査対象者全体と同程度であるが,他の非行群と重複せず薬物非行群又は交通非行群のみに所属する者(7-3-3-2-1表の各非行群の下段)に限ると,いずれも刑事処分を受けた者の比率は低い(それぞれ,28.6%,29.7%)。

7-3-3-2-3図は,調査対象者全体(総数)及び非行群別に,犯罪類型率(調査対象者全体及び各非行群の総数に占める各犯罪類型の人員の比率)を見たものである。


7-3-3-2-3図 犯罪類型率の比較
7-3-3-2-3図 犯罪類型率の比較

重大非行群を除き,いずれの非行群においても,同種の犯罪類型率が,調査対象者全体における各犯罪類型率に比して高く,特に,窃盗,粗暴,性及び薬物の各非行群の同種犯罪類型率は顕著に高い。本件出院後に刑事処分を受けた者においては,これらの犯罪に関し,少年時の非行と出院後の犯罪の間に一定の連続性があることが指摘できる。

次に,非行群別の特徴を見ると(7-3-3-2-1表参照),窃盗非行群においては,調査対象者全体に比して窃盗犯罪類型率が高いほか,重大犯罪類型率も4.5%と高い。また,窃盗犯罪類型率が最も高いが,それ以外の犯罪類型率も調査対象者全体における比率とほぼ同程度であり,犯罪傾向が窃盗にとどまっていないことがうかがえる。なお,これは他の非行群と重複のない者についても同じである。

粗暴非行群においては,調査対象者全体に比して粗暴犯罪類型率が顕著に高く,他の非行群と重複する者では粗暴犯罪類型率が22.2%(90人中20人)とさらに高い。なお,重大犯罪類型率も3.5%(傷害致死1人,強盗6人)と調査対象者全体より高い。他方,粗暴非行群の各犯罪類型率を見ると,窃盗犯罪類型率が,粗暴犯罪類型率とほぼ同程度ながら最も高くなっている。粗暴非行群については,同種の粗暴犯罪のほか,窃盗犯罪との関連も強く,さらにそれらが複合した重大犯罪(強盗等)に至るおそれもあることがうかがわれる。

薬物非行群における刑事処分を受けた者の比率は,調査対象者全体と同程度であるが,他の非行群と重複する者(29人)に限ると,刑事処分を受けた者の比率が51.7%,実刑となった者の比率が27.6%と,いずれも調査対象者全体に比して顕著に高い(本項(2)参照)。

交通非行群においては,刑事処分を受けた者の比率は調査対象者全体と同程度であるが,実刑となった者の比率は13.2%と調査対象者全体に比して若干低く,特に他の非行群と重複しない者では8.1%と顕著に低い。それに対して,他の非行群と重複する者では,刑事処分となった者の比率(51.3%)も実刑となった者の比率(20.5%)も調査対象者全体に比して高くなっている。このように交通非行群も,他の非行群と重複するか否かで犯罪傾向が大きく異なっている。

また,調査対象者全体において犯罪類型率を見ると,窃盗犯罪類型率が19.1%で最も高く,刑事処分を受けた者(248人)に限ると,そのほぼ半数が窃盗犯罪類型に及んでいる。また,非行群別に犯罪類型ごとの実人員を見ても,性非行群を除くいずれの非行群においても窃盗犯罪類型に及んだ者が最も多く(他の犯罪類型と同数となる場合を含む。),出院後における窃盗の防止は,少年時の非行名に関わらず重要な問題であるといえる。

(2)薬物非行

薬物非行群について,男女別構成を見ると,男子41人,女子23人と,調査対象者全体(男子606人,女子38人)と比べ,女子比が高い。さらに,男女別構成を,他の非行群との重複の有無別に見ると,重複していない者において,男子14人,女子21人と,女子比が顕著に高い。

薬物非行群について,男女別に刑事処分状況を見ると,7-3-3-2-4図のとおりである。男子で刑事処分を受けた者の比率,実刑となった者の比率は,それぞれ,58.5%,29.3%と女子に比べて顕著に高く,調査対象者全体と比べてもかなり高い。また,男子の窃盗,粗暴,薬物及び重大の各犯罪類型率は,それぞれ,29.3%,22.0%,26.8%,9.8%と,いずれも調査対象者全体の犯罪類型率と比べて顕著に高い。


7-3-3-2-4図 薬物非行群 刑事処分状況(男女別)
7-3-3-2-4図 薬物非行群 刑事処分状況(男女別)

薬物非行群で他の非行群との重複の有無により刑事処分を受ける比率に差異があるのは,重複している者では女子が2人であるのに対し,重複していない者では女子が21人と多数を占めていることを反映したものであるといえる(男子に限ると,重複していない者が刑事処分を受ける比率が,重複している者の比率より若干高い。)。

本件非行名に毒劇法違反又は覚せい剤取締法違反を含む者(それぞれ33人,32人であり,双方を含む者3人を含む。)について,本件出院後の刑事処分及び薬物事犯の状況を男女別に見ると,7-3-3-2-5図のとおりである。いずれの非行においても,男子は,刑事処分を受けた者及び実刑を受けた者の比率が,調査対象者(644人)全体(それぞれ38.5%,15.1%。7-3-3-2-2図参照)に比して顕著に高く,特に,非行名が覚せい剤取締法違反であった者は,刑事処分を受けた者が10人(76.9%)で,しかもその半数(5人)が実刑を受けており,刑事処分の状況は著しく悪い。また,毒劇法違反又は覚せい剤取締法違反の非行があった者で刑事処分を受けた者について,全刑事処分に係る罪名中に薬物事犯を含む者の構成比を見ると,それぞれ46.7%(7人),50.0%(5人)と高い。さらに,全刑事処分の罪名数(全刑事処分に係る裁判における罪名の合計数を人員で除した値)は,刑事処分を受けた者(248人)全体では2.2であるのに比べ,覚せい剤取締法違反の非行のあった男子では3.0,毒劇法違反の非行があった男子では2.7と顕著に高く,覚せい剤取締法違反又は毒劇法違反の非行があった男子では,より多数の罪名の犯罪に及んでいるといえる。


7-3-3-2-5図 薬物非行内容別刑事処分状況
7-3-3-2-5図 薬物非行内容別刑事処分状況

薬物非行歴のある男子については,出院後に犯罪に及んだ者の比率が高く,薬物犯罪を繰り返す傾向がかなり強いこと,さらに,犯罪傾向が多方向に拡大し,その他の犯罪を併せて引き起こす傾向もあることが指摘できる。

(3)保護処分歴

7-3-3-2-6図は,非行群別・保護処分歴別に刑事処分状況を見たものである。


7-3-3-2-6図 保護処分歴別刑事処分状況(非行群別)
7-3-3-2-6図 保護処分歴別刑事処分状況(非行群別)

前項において,調査対象者全体で少年時の保護処分歴が刑事処分の有無・内容と関連していることを指摘した(7-3-3-1-1図参照)が,これをより細かく各非行群に分類した上でその特徴を見ると,いずれの非行群においても,保護処分歴を有する者において,保護処分歴がない者に比べ,刑事処分を受けた者の比率が高く,また,性非行群を除き,少年院送致歴がある者は,保護観察歴にとどまる者に比べ,刑事処分を受けた比率及び実刑となった比率がいずれも高く,調査対象者全体と類似した様相を示している。しかし,性非行群においては,対象者数が多くはないものの,少年院送致歴がある者と保護観察歴にとどまる者の間で,刑事処分を受けた比率及び実刑となった比率のいずれでもその高低が逆転している。また,性犯罪類型で刑事処分を受けた者16人について,保護処分歴を見ると,少年院送致2人,保護観察7人,児童自立支援施設等送致1人,保護処分歴なし6人となっており,少年院送致歴のある者よりも,保護処分歴なしの者の方が多い。保護処分歴と刑事処分との間の関連性は,各非行群に共通の問題であるが,性犯罪については,少年時の非行性の進度にとどまらない問題の存在をうかがわせる。

さらに,粗暴非行群のうち,少年院送致歴のある者に限ってみると,その70.0%(28人)が刑事処分を受け,42.5%(17人)が実刑となっており,他の非行群の少年院送致歴を有する者と比べ,それぞれの比率が高い。また,刑事処分の罪名を見ると,強盗(3人)及び傷害致死(1人)が含まれており,少年院送致歴のある粗暴非行群のうち重大犯罪類型に及んだ者の比率(10.0%)は,調査対象者全体の重大犯罪類型率(2.8%)と比べて顕著に高い。したがって,少年院送致歴のある粗暴非行群の刑事処分状況は,出院後に犯罪に及んだ者の比率の高さにおいても,質においても深刻である。

(4)就労

前項において,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者等に比べ,刑事処分を受ける者の比率が高いことを指摘した(7-3-3-1-7図参照)が,7-3-3-2-7図は,窃盗,粗暴,薬物及び交通の各非行群別に,保護観察終了時の就労状況別の刑事処分状況を見たものである。


7-3-3-2-7図 保護観察終了時の就労状況別刑事処分状況(非行群別)
7-3-3-2-7図 保護観察終了時の就労状況別刑事処分状況(非行群別)

これらの非行群においては,いずれも無職であった者が,有職であった者等に比して,刑事処分を受けた者の比率が高く,特に,粗暴,薬物及び交通の各非行群における無職であった者が刑事処分を受けるに至った比率は,それぞれ,54.1%,58.3%,58.3%であり,有職であった者との差が大きい。