前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成18年版 犯罪白書 第6編/第3章/第6節/1 

第6節 不法入国・不法滞在対策等の推進

1 不法入国・不法滞在対策等の取組の背景

 近年,各国において,様々な分野で国際化が進み,また,通信及び交通手段等の急速な発展に伴い,刑事司法の分野においても,いわゆる「国境を越える脅威への対応」が重要な課題となっている。
 我が国においても,外国人の不法入国・不法滞在の問題や来日外国人による犯罪が社会的に大きな問題となっており,国民が治安に大きな不安を感じる要因の一つとなっている。来日外国人による一般刑法犯の検挙件数は増加傾向にあり,地方への拡散傾向もうかがわれる。また,国民に著しい不安を与える侵入窃盗や強盗等についても,来日外国人の検挙件数が増加傾向にある(第3編第1章第2節参照)。さらに,来日外国人の犯罪の背後には,来日外国人犯罪組織の存在がうかがわれるほか,来日外国人が我が国の暴力団関係者と連携して犯罪を行う事例等も見られる。
 こうした状況に対処するため,政府は,安全で安心な社会を取り戻すという治安対策の観点からだけでなく,平穏かつ適法に滞在している多くの外国人に対する無用の警戒感を払拭するという観点からも,来日外国人による犯罪対策に取り組んでおり,特に犯罪の温床になりやすい不法滞在者に対する対策を強化している。「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」では,「不法入国・不法滞在対策等の推進」を講ずべき施策の一つとしており,当時25万人程度と推計された不法滞在者を,平成16年から20年までの5年間で半減させるという目標を掲げた。