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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第3章/第5節/3 

3 改革に向けた取組

 有識者会議は,更生保護を「犯罪や非行を摘発し,刑罰や保護処分を行う刑事司法制度の最終段階を担う重要な一環」であると位置付けた。そして,更生保護制度の改革について,「裁判員制度や行刑改革など一連の刑事司法改革の最後の仕上げ」であるとして,その意義と重要性を強調した。
 法務省は,有識者会議の提言を踏まえ,[1]保護観察官の責任を明確化するとともに,再犯防止に実効性のある処遇方法を開発し,実施すること,[2]保護観察官と保護司との役割を整理し,保護観察官は,権力的な措置を必要とする処遇困難な対象者にその業務を最大限集中すること,[3]更生保護の既存の業務及び組織体制を見直し,保護観察官が,専門職として保護観察の現場の業務に専念できる組織体制を構築すること,[4]自立更生促進センター(仮称)構想を推進し,充実した就労支援を行うとともに,特に強化された処遇を行うことのできるセンター体制を設け,改善更生及び再犯防止を促進することなどに取り組んでいる。
 実効性の高い保護観察処遇に向けた取組としては,既に,平成16年4月から,覚せい剤事犯の仮釈放者に対する簡易尿検査(第3編第3章第3節4参照)を実施しており,18年度からは,性犯罪者処遇プログラム(本編第4章第4節2参照)を実施している。
 また,保護観察から離脱し,再犯の危険性が高い所在不明者については,平成17年12月から,新たに警察の協力を得て所在調査を実施しており,18年5月31日までの間に,警察からの連絡により仮釈放者153名,保護観察付き執行猶予者117名の所在が判明した。これにより,同日現在における所在不明者は前年同日より250名減の1,292名(うち保護観察停止中の仮釈放者457名(前年比173名減),保護観察付き執行猶予者835名(同77名減))となった。
 さらに,法務省と厚生労働省は,「刑務所出所者等総合的就労支援対策」を取りまとめ,平成18年度から,準備が整い次第,順次,[1]協力雇用主が刑務所出所者等を雇用しやすくするための身元保証システム,[2]雇用の促進のためのトライアル雇用,[3]就労知識・技術を身に付けるための職場体験講習や職場見学会等を,実施する予定である。