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 昭和43年版 犯罪白書 第二編/第四章/一/2 

2 女子犯罪の特色

 すでに述べたように,女子の犯罪は,男子の犯罪に比較して,著しく少なく,また,処遇の各段階においても,寛大に取り扱われる場合が多いために,自由刑の実刑を受ける女子犯罪者は,きわめて少ない。これは,一つには,女子犯罪が,男子の犯罪とは質的に異なることによるものと思われる。男女における犯罪の質的差異の一端は,罪種によってうかがうことができよう。
 昭和四一年における刑法犯の通常第一審有罪人員を,主要罪名別に示すと,II-117表のとおりである。

II-117表 男女別刑法犯通常第一審主要罪名別有罪人員(昭和41年)

 男子に比較して,女子の割合の高い罪名は殺人,嬰児殺,尊属殺人,放火,公然わいせつ等であり,これに反して,暴行,傷害,脅迫,恐喝等の粗暴な犯罪は著しく少ない。これはいずれも,女子の身体的,心理的特性を反映しているものと思われる。女子の犯罪で,殺人が比較的多いのは,薬物を使用したり,睡眠中の機会を利用するなど,体力の弱い女子にも遂行しうるためであり,とくに,人間関係のもつれなどから,激情にかられて行なわれる場合が多いためであろう。
 女子有罪人員の絶対数では,窃盗,詐欺および殺人が多く,窃盗は,総人員の四八・六%,詐欺は一六・六%,殺人は五・七%を占めている。男子では,窃盗三七・五%,詐欺八・六%,傷害八・三%,殺人は一・四%である。