2 処遇の概要 婦人補導院の行なっている補導処分は,刑罰ではなく,本人の保護,矯正のためのもので,在院者が社会生活に適応するために必要な生活指導と職業の補導,さらに,更生の妨げとなる心身の障害に対する医療を行なうことに,重点がおかれている。補導処分による収容期間は,六月と規定されているが,この期間,前期と後期の二期に分け,生活指導,職業補導,医療処置を適宜組み合わせて,個々の在院者に応じた,分類処遇を行なっている。 生活指導は,院内生活のすべてを通じて行なわれ,講演,音楽,芸術作品の観賞,社会見学などの教育的行事のほか,茶道,生花,短歌,珠算などのクラブ活動によって,徳性と情操の向上が図られている。なお,篤志面接委員は,一七人が委嘱され,保護相談,精神的煩もんの解決,職業相談などに活溌に活動している。 職業補導としては,家事,園芸,洋裁,和裁,手芸のほか,謄写,タイプなどが行なわれている。また,施設の自営用務である炊事,清掃および洗たくなどにつかせている者もある。このほか,院外委嘱職業補導(院外補導)として,施設外の事業所等に住込み,または,通勤で,補導を受ける制度もあり,この院外補導には,現在,ラジオ部品組立て,靴下加工などがある。さらに,また,課業終了後の余暇時間には,費用を自己の収支において行なう造花,ビーズ・ドル入れの製作,毛糸編みなどの自己労作も認められている。職業補導を受けた者に対しては,職業補導賞与金が与えられる。昭和四二年の出院者についてみると,出院時の交付金は,二〇一人中九八人(四九%)は六,〇〇〇円未満であり,一五,〇〇〇円以上の者は,三七人(一九%)にすぎない。 前にみたように,入院時疾病のない者は,約四割にすぎず,他は,性病その他の傷病にかかっている者であるが,出院時におけるその治ゆ状況をみると,昭和三三年以降の入院時性病帯患者九九〇人中,治ゆした者は,五五五人(五六・一%),性病以外の傷病者五九三人中,治ゆした者は,三四四人(五八・〇%)である。 在院者は,六月の補導期間が満了すれば,退院となるが,それ以前でも,補導成績の良好な者は,地方更生保護委員会の決定により,仮退院が許される。昭和四二年についてみると,出院者二〇一人中,仮退院は,五人で,昭和三五年には,四五%あったのに比べると,著しい減少である。 次ぎに,出院者の帰住先についてみると,昭和四二年の出院者中半数以上の者は,父,母,夫,兄弟姉妹などの親族の下に帰住しているが,それ以外の七一人は,知人,雇傭主,婦人保護施設,病院,下宿などに帰住している。 婦人補導院においては,個性に応じた処置を徹底するため分類処遇を実施しているが,右に述べたとおり,在院者に精神薄弱者が多く,また,身体的疾病を有する者が多いうえ,年齢が壮年から,高年齢までの広い分布を示し,処遇期間も六月に限られているため,処遇の効果をあげることに著しい困雉が伴っている。
|