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 昭和43年版 犯罪白書 第一編/第三章/二/1 

二 婦人補導院における処遇

1 収容状況

 婦人補導院は,売春防止法第一七条により補導処分の言渡しを受けた満二〇歳以上の女子を収容して,これを更生させるために,必要な補導を行なうことを目的とする施設で,東京(八王子市),大阪(堺市)および福岡(福岡市)に設けられている。
 昭和三三年五月,婦人補導院発足以来一〇年間の入出院状況は,I-84表のとおりであり,昭和四二年末までの新入院者は,二,六三九人で,昭和三五年の四〇八人を頂点として,年々減少している。昭和四二年の新入院者は,一五〇人で,前年に比べて八一人減少している。昭和三四年から三年間の年平均新入院者は,三七六人であったのに対して,昭和四〇年以降三年間のそれは,二一一人で,婦人補導院設立当時に比べて,約五七%に減少している。なお,参考までに述べると,昭和三四年から三年間の売春防止法関係の女子新受刑者は,年平均約一五一人で,同時期の女子新受刑者に対する比率は,一三・五%であったが,昭和四〇年から三年間の売春防止法関係女子新受刑者は,年平均二八三人で,昭和三四年から三年間の年平均に比べて,一三〇人余増加し,女子新受刑者全員に対する比率も,二九・〇%と増加している。

I-84表 婦人補導院入出院状況(昭和33〜42年)

 昭和四二年の新収容者の入院時年齢をみると,I-85表のとおりで,三〇-三四歳が最も多く,二三・三%である。三〇歳未満は,三三・三%であり,三五歳以上は,四三・三%である。昭和四一年も,ほぼ,同様である。なお,参考のため,婦人補導院開設以来の新入院者二,六三九人の年齢構成をみると,I-10図に示すとおりで,二五-二九歳が最も多く,二六・八%を占め,三〇-三四歳は,二一・〇%であり,三五歳以上は,三二・九%である。最近における,婦人補導院入院者の年長者増加の傾向がうかがえる。

I-85表 婦人補導院入院時年齢(昭和40〜42年)

I-10図 新収容者の入所時年齢(昭和33〜42年の累計)

 入院者の入院度数についてみると,I-86表のとおりで,昭和四二年においては,初めての者が五九・三%で,過半数を占めている。二度目の者は,二四・〇%,三度目の者は,一〇・〇%,四度目の者は,四・〇%,五度目以上の者は,二・七%である。昭和四一年と,ほぼ,同様の傾向を示しているが,初めての者が,やや増加している。しかし,昭和三三年以降の入院者二,九三九人についてみると,初めての者が一,七三八人(六五・九%)で,最近は初めての者の率が減少しているといえよう。

I-86表 婦人補導院入院度数(昭和40〜42年)

 新収容者の知能検査の成績を示すと,I-87表のとおりで,昭和四二年においては,知能指数六九以下の知能の低い者が五六・七%で,相当高率を示しているが,昭和四一年の五八・九%に比べると,やや低くなっている。ちなみに,昭和三三年以降の新収容者二,六三九人について,知能指数の段階別構成をみると,I-11図のとおりで,六九以下の知能指数の低い者は,五二・七%であり,最近の新収容者の知能指数の低下がうかがえる。

I-87表 婦人補導院新収容者の知能指数別人員(昭和40〜42年)

I-11図 新収容者の知能指数(昭和33〜42年の累計)

 新収容者の精神状況は,I-88表に示すとおりで,昭和四二年は,精神薄弱者が四八・七%で,半数に近い。次いで,準正常が四三・三%で,正常は,わずかに,二・〇%にすぎない。昭和四一年では,精神薄弱者は,三九・四%で,昭和四二年は,割合において,相当の上昇が認められる。

I-88表 婦人補導院新収容者の精神状況(昭和40〜42年)

 新収容者の入院時の傷病の状況は,I-89表のとおりで,昭和四二年において,性病にかかっていた者が四二・〇%,性病以外の傷病が二二・〇%で,疾患のなかった者は,三五・三%にすぎない。

I-89表 入院時の疾患(昭和40〜42年)